全日本ピアノコンクール

宍戸美月さん

未就学の部の最優秀賞は、神戸海星女子学院マリア幼稚園 年長(出場当時)の宍戸美月さんです。師事する岡田裕子先生からの勧めで初めてエントリーした昨年度に続き、2年連続での出場でした。お母様と一緒にインタビューに答えてくれました。

宍戸美月さん

美月さん、お母さんともに「まあまあかな」という手応えだったという全国大会。舞台袖で聴いていたお母さんは、「指が滑っていってしまったり、できなかった部分もあったりして、100%の出来だったかと言うとそうではありませんでした。こんなものかな……という感触でした」

でも、結果は最優秀賞。昨年度も銀賞とはいえ審査員からの評価が高かった美月さんですが、今回の全国大会も6人すべての審査員が90点以上をつける高評価でした。コンクールでの初めての最高位に「驚きました」とお母さん。美月さんは自ら幼稚園の担任の先生に報告をして、「おめでとう!」と言ってもらったことが嬉しかったと言います。ネット上に公開されている美月さんの演奏動画を観たべつの先生からも、「上手だったよ」と声をかけてもらいました。おじいちゃんやおばあちゃんも、動画で演奏を聴いてくれました。「じょうずだねえ、やりたいならどんどんやりなさい」といつもあたたかく見守ってくれています。もちろん、普段から会場への付き添いなども含めてサポートしてくれているお父さんも、今回の結果を喜んでくれました。

美月さんがピアノをはじめたきっかけは、保育園の先生を真似して、自宅にあったミニピアノを弾きながら繰り返し歌っていたことでした。「シールノートを楽譜に見立ててピアノの前に置いて、“おはようございまーす!これからお歌を歌いますよ〜。さん、はい!”と言葉までそのまま真似をして(笑)。それをずっと繰り返していたので、音楽が好きなのかなと」。子どものころにヴァイオリンを習った経験のあるお母さんは、「わたしは顎にヴァイオリンをあてるのがつらかったんです……だから、3歳からはじめる楽器としてもピアノがいいかな、と思い決めました」

ピアノをはじめたころ

今回は、小学校の受験勉強との両立で臨んだ大会でした。夏期講習や模試などを受けながらコンクールに出場することは、美月さんはもちろんお母さんにとっても簡単なことではありませんでしたが、おなじお教室に受験直前までコンクールに出場した経験のある生徒さんがいることを聞いていたので、そのことを励みに自分たちもできる範囲でやってみようとエントリー。もともと「練習や先生のレッスンが好き」という美月さんは、お母さんと先生と一緒に乗り越え、無事に小学校にも合格しました。

「岡田先生は普段から、この子にわかるように、映像を観せてくださったり、むずかしいリズムでも歌詞をつけてお歌にして教えてくださったり。和音も、キラキラとかハートとか雲とか、子どもでもイメージがわくように伝えてくださる。それが、とても楽しいみたいです。ときどき踊ってくださることもあって(笑)。からだで、演奏や音の印象を表現してくださいます」。先生のレッスンは週に一回ですが、自宅では毎日、幼稚園に行く前と帰宅後に、合わせて2時間練習しました。

岡田裕子先生と

「やらなくてはいけない時、たとえば大会前の練習などの“頑張り時”をわかっているようで、そのときになるとちゃんと取り組むことができるタイプ。だから受験も、いま頑張らなくてはいけない時だと理解して、ちゃんとできたのだと思います。でも、それ以外の時は、ネジが外れたみたいに、おちゃらけたり、モジモジしたり(笑)」。もっと小さなころはお母さんが声かけしなければできなかったことも、年長さんになると “いまかな”と本人が感じ取ってできるようになったと言います。
そして、前回の銀賞から一年。お母さんは「先生の教えてくださったことを吸収しようとする意欲がより一層芽生えたことが、前回との大きな違い。精神面だけではく身体の成長もありますね。先生から聞いたことを自分で理解して受けいれて、それを演奏で表現できるようになってきたことが、この一年の成長だと感じています」

美月さんは、3歳からバレエも習っています。こちらも週に一回のレッスンで、身体を動かすことも大好き。その日の気分で変わる将来の夢は、「バレエの先生」の日もあります。ほかに、お菓子やスイーツが大好きなので「ケーキ屋さん」、そして「獣医さん」や「赤ちゃんのお医者さん(小児科医?)」などなど。この日は「美容師」でした。

将来の夢は、いろいろ

その中でも「ピアノは大人になっても、ずっと弾きたい」と美月さん。「本番のステージではすこし緊張するけれど、だれかに演奏を聴いてもらうことがうれしい」と言います。大会は審査のため拍手が起こることはあまりありませんが、発表会や演奏会でたくさんの拍手をもらうことが一番うれしいことです。そして「ディズニーの曲が好きだから、いろいろ弾けるようになりたい」と恥ずかしそうに、でも笑顔で話しました。

最後に「このさき本人がもっと、“ここまでやりたい”と言うようになるのだと思います。たとえば、このコンクールに出たいとか、ここで勉強したいとか。そのためのサポートは、ずっとしたいと思っています」とお母さん。たくさんのあたたかな眼差しとサポートに包まれて、美月さんは一つひとつ階段をのぼります。

 

お母様曰く「恥ずかしがり屋」という美月さんですが、画面越しにはお茶目な表情もたくさん見せてくださいました。ご家族や岡田先生はもちろん、まわりの方からやさしく見守られて、のびのびと音楽に触れている様子が感じられました。毎日変化するという将来の夢。急ぐことなく、これからゆっくり決められるといいですね。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは1月下旬に行いました。

全国大会での宍戸美月さんの演奏はこちら