全日本ピアノコンクール

A級天野薫さん

現在、渋谷区立神宮前小学校2年生の天野薫さんは、難しい曲へのチャレンジとその完成度の高さが評価されました。「とても恥ずかしがり」とのことでしたが、オンラインをつないでのインタビューでは、お母様と一緒にしっかりと受け答えしてくれました。

天野薫さん

ピアノをはじめた4歳のころからコンクールに出場し、数々の舞台を踏んできた薫さん。もっと小さなころは本番で緊張することがほとんどありませんでしたが、大きくなるにつれて、だんだんといろいろなことが理解できるようになって、本番を迎える上での気持ちも変化してきました。

今回もとても緊張したそうで、お母さんはじめ会場で聴いてくれていた先生も、薫さんの体調を心配するほど、本番で音が出ていなかったと言います。その上、制限時間の関係ですべてを演奏することができず、「すごくかなしかった」と薫さん。これから盛り上がる場面でベルが鳴ってしまい、すぐには椅子から立ち上がることができませんでした。
不安な気持ちで迎えた発表。最優秀賞という結果には、「みんなでほっとしました」。お母さんも「嬉しい評価をいただいて大変ありがたいと思いつつ、いろいろと課題が見えたので、今後に生かしたいです」と話します。

最近は、月に1、2本程度のペースでコンクールや発表会などの舞台に立つ薫さん。どのコンクールにエントリーするかは、先生とお母さんで決めています。薫さんはホールでの演奏のほうが得意ですが、コロナ禍で動画審査のコンクールが増え、少しずつ慣れてきていたため、今回も抵抗なく出場を決めました。「何度も撮り直しをしたくなるので撮影には時間もお金もかかりますが、あとから見返すことができるのは、勉強にも思い出にもなっていいと思います」とお母さん。コンクールへのチャレンジについては、薫さんも「大変だけど、頑張れます」。本番前日には、ご飯を食べられなくなってしまうというお母さんに対して、いつものようにしっかり食べられるという薫さん。まだ小学校低学年、お母さんとの二人三脚で取り組んでいます。

コンスタントにステージに立つ

普段の練習も、お母さんと一緒です。ピアノを習っていたことがあるため、お母さんが簡単な練習であれば見られる点も、薫さんがピアノをはじめたきっかけでした。そんな練習のときのお母さんは、「怖いです」と小声の薫さん(笑)。一方、先生とのレッスンは、「いつも楽しいです」。練習したことを見てもらったり、一緒に譜読みをしたり。「先生は優しくて、おもしろいので、レッスンに通うのが楽しみです。先生も、レッスンで使うピアノも、大好きです」と薫さんは言います。お母さんは、「私がいると緊張してしまうから(笑)」とレッスン時は先生に任せています。薫さんにとって、先生は第二のママのような存在。お母さんとしても、家族ではなく、心のよりどころとなる大人が身近にいることは、貴重だと考えています。

先生のことが好きなのはもちろん、同じお教室でピアノを学ぶ門下生同士が年齢問わずとても仲が良く、特にお姉さんたちには可愛がってもらっています。「コンクールにも多く出場しているので、そこで知りあったお友だちもいて、そうした人と人との繋がりを、ピアノで得られている。だから、音の魅力だけではない部分で、ピアノを好きだと思えているのかな」とお母さん。
レッスン以外の平日は、学校から帰宅すると自宅のアップライトピアノで練習をして、休日は、家族もいるため、スタジオを借りて練習します。スタジオのオーナーさんもいつも応援してくれて、今回の結果も一緒に喜んでくれました。学校の担任の先生も応援してくれます。たくさんの人に温かく見守ってもらって、続けられていると実感しています。

ピアノが縁をつないでくれる

ピアノ以外に、近くの教会でパイプオルガンも習っている薫さん。同じ鍵盤楽器でもピアノとは違った楽しさがあると言います。足鍵盤にはまだ届かないため、今度の発表会では、手の鍵盤だけで弾ける曲を演奏することになっています。「ピアノの全部が好き」という薫さんですが、「そのわりに、練習以外では全く触りません(笑)」とお母さん。普段は、本や漫画を読んだり、ゲームをしたりするのが好きな小学2年生です。

将来の夢は、ピアニスト。憧れは、世界的に活躍するアンドラーフ・シフさんです。バッハの曲を練習する時に、よく動画を観ては勉強しています。こうしたツールを使用しての学習法はいまでは一般的ですが、薫さんも例に漏れず、国内外のいろいろなピアニストの演奏を観たり聴いたりします。今年はショパン国際ピアノコンクールが開催され、日本人が活躍する姿も観ました。「ピアノを習っているお子さんにとっては、憧れの舞台ですよね」とお母さん。薫さんも、世界的なシーンで演奏する素晴らしさを目の当たりにしたことで、ピアニストへの憧れを強くしたと言います。「大人になると、なかなか大きな夢や目標を持ちづらくなるので、いまのうちに、そういう夢や目標に向かって努力できるだけでも、素晴らしいことだなと思って、見守っています」。たくさんの人に支えられて、薫さんの夢は、これから大きく膨らみます。

お母さんも大好きな薫さんの笑顔

印象的だったのは、薫さんのとてもすてきな笑顔です。たくさんの人が応援してくれるのは、そんな薫さんの人柄と、頑張る姿に魅力があるからだと思います。お母様がおっしゃった「夢や目標に向かって努力できるだけでも素晴らしい」という言葉も、心に残りました。そうして頑張れる時間を大切に、これからもたくさんの音楽を奏でてくださいね。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは2月下旬に行いました。

全国大会での天野薫さんの演奏はこちら