全日本ピアノコンクール

D級益成一葉さん

D級益成一葉さん

審査員から、細かいところまで表情が伝わってくる繊細な演奏が評価された益成一葉さんは、広島なぎさ中学校の1年生。ちょうどこの日は、学校の創立記念日のためお休みで、ご自宅からお母様と一緒にインタビューに答えてくれました。人見知りでうまく話ができるかわからないから、と事前にお渡ししたアンケートにたくさん記入をして、準備をしてくれました。

益成一葉さん

「ピアノソロのコンクールで、初めての1位だったんです」。結果を見て、とにかく驚いたという一葉さん。1歳からヤマハに通い音楽には触れていましたが、ピアノをはじめたのは9歳からと比較的遅く、当初からコンクールにも挑戦してきました。この3、4年で少しずつ結果を出し、今回、念願の1位に輝きました。インタビュー直前には、ショパン国際ピアノコンクール in ASIAオンラインアジア大会の結果が発表されたばかりで、こちらも見事金賞。続けての快挙にもちろん嬉しさはあるものの、「全日本ピアノコンクールでの初めての1位の感動は大きかった」とお母さんも話します。

ピアノをはじめたころ

12月末に行われた全国大会は、大雪の影響を受けた出場者も少なくありませんでした。一葉さんもそのひとり。前日に、自宅のある広島から新幹線で東京へ向かいましたが、京都近辺で停車してしまい、到着には通常3時間程度のところ6時間かかりました。車内での長時間の缶詰状態は、精神的にも身体的にも負担があったと言います。そんな中でも、その日行われていた大会一日目の様子をライブ配信でチェック。出場していた同じピアノ教室のお友だちの演奏を聴いたりして過ごしました。東京では練習用にスタジオの予約をしていましたがキャンセルして、別のスタジオを探し、遅い時間帯で再度予約。土地勘や情報が無いなか、お母さんがそばでサポートして臨んだステージでした。

それでも、ライブ配信ではわからなかったホールの大きさや、ステージ上に置かれたカメラの多さに、本番はとても緊張したと振り返ります。「でも、立派なホールで演奏させてもらえて、ここまで頑張ってきて良かったなと思いました」と一葉さん。広島の学校の先生やお友だち、ピアノ教室の仲間や親戚、そして佐賀県に住むおじいちゃん、おばあちゃんも、ライブ配信で観て応援してくれたそうです。

ピアノ教室でのレッスンは週2日。それ以外の日は、学校から帰宅するとすぐに1時間半から2時間程度の練習をします。休日は、朝10時ころから夜7時ころまで、練習と休憩を1時間ごとに繰り返して過ごします。同級生と遊ぶ時間はなかなか取れませんが、それでもピアノをやめたいと思ったことはありません。一葉さんにとって、ピアノは「家族のような存在」。人と話すのはあまり得意ではないけれど、ピアノを弾いていると「ピアノとおしゃべりしている感じです」。自分の部屋に置いていて、いつも一緒、いつでも弾ける環境です。

ピアノの先生は明るくて優しく、教室はとてもアットホームな雰囲気。毎週土曜日には、幼稚園から高校生までの生徒みんなで、オンラインでソルフェージュの勉強をします。参加自由ですが、画面を通してでもお友だちに会えるのは毎週の楽しみです。また、毎週木曜日には先生からお題(楽譜)の発表があり、その曲を中2日で仕上げる「新曲チャレンジ」にも取り組んでいます。これは譜読みの練習の一環で、撮影した動画を日曜日までに提出、日曜日の夜に先生から解説やアドバイスがあるという流れ。おかげで譜読みが早くなりました。いろいろなことにチャレンジさせてくれる教室で、次の発表会では、バイオリンとチェロとのアンサンブルも発表すると教えてくれました。

ピアノ教室のお友だちと

ソロの魅力は「曲の背景や物語を想像しながら音づくりができるところ」。新しい曲に取り組む際は、まず自分の中で一つのイメージを作り上げてから、練習を進めていきます。一方、「みんなで音楽を作っていく作業が楽しい」と、アンサンブルも大好きです。

ピアノと同じくらい、学校も大好きな一葉さん。小中高一貫教育の学校で、五感を刺激する授業やプログラムがたくさん用意されています。校外学習では、山奥へ自然の音を聴きに行ったり、乗馬をしたり、セミの抜け殻でアート作品を作ったり。そうした様々な経験が、ピアノを弾く際の音づくりにも役立っていると言います。

その学校で、最近とても嬉しいことがありました。今回の結果を受けて、音楽の先生がミニリサイタルを企画してくれたのです。校内のホールで同級生や先生方の前で、3曲演奏しました。もちろん全国大会で演奏した一曲、一葉さんの大好きなショパンの「ボレロOp.19」も披露しました。その後、みんなが感想を寄せてくれました。「すごかった」「感動した」……嬉しい言葉が並んでいました。「これから先、辛いことがあったら読み返そうと思います」。一葉さんの、一生の宝物になりました。

ピアノとはいつも一緒

お母様曰く「コツコツタイプ」という一葉さん。時間をきっちり決めて練習したり、初めての曲に取り組む際のルーティンがあったり、お話を聞いていて、言葉は少なめでも意志の強さが感じられました。将来の夢についてたずねると「決まっていません」とのこと。たくさんの経験を積み重ねながら、じっくりマイペースで、道を切り拓いていかれることでしょう。一葉さんの歩みは、はじまったばかり。また素敵な演奏を聴かせていただけることを、楽しみにしています。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは2月下旬に行いました。

全国大会での益成一葉さんの演奏はこちら

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