全日本ピアノコンクール

F級開坂望生さん

F級開坂望生さん

F級1位は、愛知県立芸術大学3年生の開坂望生さん。全国大会のステージでは、迫力ある演奏で、8人の審査員から高評価を受けました。前回も出場し入賞しましたが、全国大会で満足のいく演奏ができず、思うような結果を出せなかったことから、「リベンジしたい!」と昨年度に続いてのエントリーでした。
青森県のご実家に一時帰省していたタイミングでのインタビュー。外は吹雪とのことでしたが、終始リラックスした表情で答えてくれました。

開坂望生さん

4歳からピアノをはじめた望生さん。先生から勧められて、幼少期から多くのコンクールに出場してきましたが、結果が出せるようになったのは高校生からでした。それまでは、ピアノを“恐々と”弾いていました。いざピアノの前に座ると頭が真っ白になってしまい、コンクールには失敗しにいっているような状況。それを変えたのは、新たな先生との出会いでした。ピアノへの向き合いかたが変わり、どんな結果でも受け止められるようになったと言います。

小学生のころ

さらに年齢や経験を重ねるとともに、本番前の練習のしかたにも変化がありました。小さなころは、「コンクール前はお友だちと遊ばない」というルールを自分でつくるほどでしたが、例えば、前回大会からのこの1年間は、練習をしすぎないように意識して過ごしたと言います。「休日は出かけたり、リフレッシュする時間をもったり、全国大会の1週間前には友だちとたこ焼きパーティーをして楽しんだりして、うまく息抜きしながら、いい気分で本番に挑みました」。

そして迎えた全国大会。100%だったかというとそうではなかったものの、考えていた曲想や想いを音に乗せ、今まで経験した本番の中では、やりたいことができた演奏だったと話します。「前回大会と同じ審査員の先生が審査をしてくださっていたんですが、あきらかに評点が上がっていて、やっぱりものすごく嬉しかったです」と笑顔。制限時間の関係で最後まで演奏することはできませんでしたが、中には「もっと聴きたかった」と講評を寄せた審査員もいました。

大学に進学してからこれまでも多数のコンクールに出場してきましたが、必ずしもいい結果だったわけではありませんでした。思うような演奏ができたにもかかわらず、結果がついてこないことも。そんなときは「次はもっと上位をねらおう」と、その後の原動力にしたと言います。
一見ストイックなようですが、自分自身の性格を「人見知り」だと話す望生さん。大学に進学して環境が変わった際、周囲の人と話をすることさえできず、悩んだ時期がありました。それでも前に進めたのは、ピアノがあったから。自分のいろいろな感情をピアノにぶつけ、ピアノを弾くことでストレスを発散。レッスン中は、悩みを忘れられました。だからこそ、望生さんにとってピアノは「本当の自分」を出せる大切な存在です。

一番好きな作曲家は、メンデルゾーン。和声の響きや音の移り変わりがロマンチックで、いつもその音楽のつくりに感動しています。全国大会では、「スコットランド・ソナタ」を演奏しました。これまで様々な曲を弾いて模索した中で、自分に一番合う曲だと感じています。周りからの評判もよく、大学の試験でも演奏し高い評価を受けた、思い入れのある一曲です。これからもっとメンデスゾーンの作品を深めたいと考えています。

現在、大学3年生。そろそろ卒業後の進路も考えはじめる時期です。プロのピアニストを夢見たこともありましたが、現実に近づくと厳しさも理解できるため、今では中学校や高校の音楽教師という道も検討していて、春に4年生になったら、教育実習へ行くことが決まっています。でも、ピアニストの道もまだ諦めてはいませんし、大学院進学も選択肢にあると言います。

大学生活はあっという間に過ぎていき、“あと1年しかない”という感覚。「この1年間で何をやろうか、何ができるか、しっかり考えていろいろな曲に取り組んでいきたいです」。

大切なリフレッシュの時間

望生さんがピアノをはじめたきっかけは、お母さんの意向でした。お母さん自身は高校生の時にピアノをやめたそうですが、望生さんがこれまで続けていることを、とても喜んでいます。今回の結果発表も、望生さんが見るより先に確認して「おめでとう!」と電話をかけてきてくれました。望生さんの帰省中には、家族そろってお祝いパーティーを開催。青森と名古屋、離れていてもいつも心はそばにいて、みんなで望生さんを応援しています。

全国大会の会場で

演奏のときとは違い、お話されるときはふんわりとした優しい雰囲気の望生さん。インタビューの時間は、とても楽しく穏やかに流れていきました。望生さんは「ピアノは、本当の自分を出すことのできるもの」と話してくれました。“これがあるから頑張れる”“このおかげで変われた”というものの存在は、これからの長い人生においてもきっと大きな支えとなるはずです。いつまでも大切にしてほしいです。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは2月下旬に行いました。

全国大会での開坂望生さんの演奏はこちら

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