連弾:U12部門で金賞を受賞したのは、小学6年生の秋田帆々美さんと、小学4年生の佳乃羽さん姉妹。録画された演奏からも伝わってくる緻密な音の重なりや、情景が浮かぶような表現力は、聴く人の心を惹きつけて離しません。華やかな結果の裏にあった日々の積み重ねと、音楽へのまっすぐな思いについて、姉妹とお母様にお話をうかがいました。
秋田佳乃羽さん、秋田帆々美さん
姉の帆々美さんがピアノに触れたのは年中の5歳です。きっかけは「なんとなく音楽が好きだった」という素朴な気持ちでした。幼稚園の放課後にオプションとして申し込める、週1回20分のレッスンからスタートし、妹の佳乃羽さんもお姉さんの影響で同じ先生に年中から習い始めました。
姉の帆々美さんは小学校入学後もそのまま続けていましたが、小学2年生の時にコロナ禍の影響でレッスンが4カ月以上休止に。また、週1回20分という短い時間では満足できなくなった帆々美さんの希望もあり、長い時間レッスンしてくださる個人の先生を探すことになりました。そうして出会った現在の小嶋先生は、体験レッスンの時点で音の出し方や指の形まで濃い内容を丁寧に教えてくださり、帆々美さんもお母さまも「この先生に師事したい」と即決したそうです。
初めて連弾を遊びで弾いた時
現在のレッスンは1人1回90分。1人がレッスン中、もう1人は演奏を聴きながら勉強や課題をして待っています。新しい先生になって一番最初に取り組んだのは“音の出し方”だったそうで、具体的なことでは指の形を整えるためにテーピングを巻いて弱い指を意識する工夫も取り入れました。
普段の練習は、限られた時間を集中して行うスタイルです。姉の帆々美さんは高学年になり塾などもあるため、長時間ではなく短時間で効率重視の練習に切り替えました。幼稚園や低学年の頃はコロナ禍で自宅にいることが多かったこともあり、暇さえあれば弾いていたそうですが、今は1人1時間から1時間半程度で、集中して取り組んでいます。
姉妹での連弾は、もともと小嶋先生のお誕生日にハッピーバースデーを演奏したことがきっかけでした。「2人で弾くのが楽しかった」という素直な気持ちから、自然と本格的な連弾に挑戦するようになりました。連弾の魅力については「2人で作るハーモニーの美しさがいいなって思っています」「1人で弾くときよりも緊張が和らぐ」とのこと。普段の連弾の練習は、まず各自が自分のパートを仕上げ、完成度を高めてから合わせるという方法を取っています。
今回の本選前に「水信フルーツパーラーラボ」でスイーツを堪能
今回のコンクールでは、森山智宏『星のため息』、ビゼー『「子供の遊び」Op.22 第2曲 こま』を演奏しました。選曲にあたっては、自分たちで弾きたい曲を探しました。テクニックだけではなく、曲から感じるイメージや情景を重視しました。『星のため息』では星空をテーマにした写真集を参考にし、音の雰囲気や響きを作っていったそうです。『こま』については、実際にコマを制作して遊んだ経験があり、その時の記憶や動きを音に反映させるよう工夫しました。
2曲目の『こま』はトリルの揃え方やリズムの縦のラインを合わせる精度も高めました。姉の帆々美さんが先行しがちな箇所では妹の佳乃羽さんが追いつき、帆々美さんは妹の音をよく聴いて合わせるようにしています。お互いに音を聴き合う姿勢が、審査員からも高く評価されました。
本選の演奏後、本人たちは弾き始めのわずかなズレを気にしていましたが、躊躇せず弾き切ったことに対して「よく頑張ったね!」とお母さまも語っていました。演奏を聴いた審査員からは「ハーモニーが美しい」「息遣いが自然」「情景が浮かぶような音作り」「センスのある音の選び方」などの講評が寄せられました。動画で審査した先生からも「可能性を強く感じるペア」と評価されました。
夏の全国大会の時に門下生のお友達とお寿司へ。5人でサーモン60貫を完食!(先生からのご褒美)
姉妹それぞれの将来の夢も印象的でした。妹の佳乃羽さんは「ピアノが弾ける鍼灸師」という個性的な回答。鍼灸師である叔母の影響で東洋医学に興味があり、ピアノは趣味として続けつつ、人の役に立つ仕事に就きたいと考えているそう。
一方、姉の帆々美さんは「将来の夢はまだ決まっていないけど、勉強も頑張りたいし、ピアノも続けていけたらいいかなって思ってます」と語ってくれました。
そのほかにも地域の文化祭で演奏を披露したり、ピアノを通じた交流も大切にしています。「せっかく姉妹で連弾ができるし、今後も地域のそういうイベントなどに参加できたらいいかなと思います。ピアノはこれからも細く長く続けていきたいです」と微笑む2人の姿から、音楽が生活に根付き、それが地域や人々との絆を紡いでいることが伝わってきました。
日々の積み重ねと、互いを思いやる演奏が形となり、今回の成果へとつながった秋田姉妹。これからもその美しいハーモニーでたくさんの人々とのご縁やつながりを大切にしていってほしいですね。
※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは2025年3月下旬に行いました。
全国大会での秋田佳乃羽さん・帆々美さんの演奏はこちら。