B級1位
長井遥香さん
小学6年生ですが、非常に大人びた完成度の高い演奏を聴かせてくれた遥香さん。 お母様と一緒にオンラインでのインタビューに答えてくれました。
――今日は、学校はあったんですか?
遥香さん:今日は短い授業がありました。
――お疲れのところごめんなさいね。よろしくお願いします。
遥香さん:よろしくお願いします。
――改めて1位おめでとうございます。
遥香さん:ありがとうございます。
――手応えはありましたか?
遥香さん:どうだろう? 他の子の演奏があまり聴けなかったので、あまりわからなかったです。
――そうですね。本選は一人で演奏していただいてという感じでしたので。でも、お友達とかも結構いらしたんじゃないですか?
遥香さん:はい、いました。
――お友達とちょっと情報交換したり、そういうのはなかったですか?
遥香さん:あったかな。直前で「頑張ってね!」みたいな感じはありました。
――B級は全部門の中で一番エントリー数が多かったんですね。審査員の先生方が「とにかくレベルが高い」と口を揃えておっしゃっていた中での1位だったので、本当に素晴らしかったと思います。小学校6年生ですよね?
遥香さん:そうです。
――何歳からレッスンをしていらしたんですか?
遥香さん:4歳からやっています。
――結構、4歳ぐらいからは多いですね。なんとなくそれぐらいが始めるタイミングなのかもしれませんけれども、遥香さんの場合はどういうきっかけでピアノを始めたんですか。
遥香さん:もともとお兄ちゃんがピアノをやっていて、それでやりたいということで始めました。
――お兄さんとはいくつ違いなんですか?
遥香さん:3つ上です。
――そうすると、小学校1年生ぐらいのお兄さんを見て、やりたいなと思ったということ?
遥香さん:はい、そうです。
――自分でも弾けるようになりたいと思ったんですか? それとも楽しそうだなとか? どういう思いだったんですか?
遥香さん:楽しそうと思いました。
――お兄さんも続けていらっしゃるんですか? 今も。
遥香さん:今は少しだけ。
お母さん:本当に少しだけ弾いています。
――そうなんですね。中学生ですよね。
お母さん:今3年生です。
――男の子のピアノで中学というと、やめるか続けるかという分岐点になるタイミングかなという気はしますけど、遥香さんは、この後中学校に入りますけれども続けますか?
遥香さん:続けます。
――でも、4歳から始めて今12歳ですよね。
遥香さん:はい。
――8年。
お母さん:そうですね。すごいですね、考えてみると。
――そう簡単にできる年数ではないと思うんですけれども、どうしてここまで続けられたと思いますか?
遥香さん:コンクールとかで賞をもらうのが嬉しかったからだと思います。
――コンクールは早い段階から挑戦されていたんですか?
遥香さん:はい、そうです。
――初めて出たコンク―ルは何歳の時ですか?
遥香さん:5歳だと思います。
――じゃあ1年ぐらいでチャレンジしたということですか。その時の結果はどうだったんですか?
お母さん:全国大会で金賞をいただいて。
――いきなりですか! すごいですね! その後はどういう感じの戦歴なんですか?
お母さん:夏にピティナ・ピアノコンペティションという大きなコンクールが毎年あるんですけれども、年長の時に幼児の部の地区本選で1位をいただいて、入賞コンサートに出たのが初めてで、そこから毎年夏はそのコンクールに出るのが部活のような感じで。
――そうなんですね。今年はコンクール自体なかったんでしたっけ?
お母さん:そうです。限られた級だけで、今年は参加しなかったんです。
――じゃあ、いきなり金賞を取って次の年が、その年長さんということですね?
お母さん:はい。
――もう負け知らずという感じがするんですけれども。
お母さん:そんなことないです。
――挫折とか悔しい思いをしたことはあるんですか?
お母さん:何度もあるよね。
遥香さん:うん。
――コンクールで?
遥香さん:はい。
――それでもやめようと思わなかったですか?
遥香さん:思わなかったですね。
――どうして?
遥香さん:次の年は別のコンクールで上にいきたいなと思って、頑張って練習したからだと思います。
――常に上を目指すということを意識していましたか?
遥香さん:自分で気にはしています。
――それで頑張って、次に結果というのは得られたんですか?
お母さん:そういうことが多いかな。悔しい思いをした後のほうが、結果がいいというか、伸びしろが。頑張り屋だと思います、すごく。
――そうなんですね、お母さまから見ても。
お母さん:そうですね。とても真似できないです。あと、同じお教室のお友達にもすごく恵まれたなと思いますね。
――実はA級部門の中井瑠美奈さんに先週インタビューさせていただいて、「遥香さんが憧れだ」ということを何度もおっしゃっていて。
遥香さん:去年、教室の発表会で連弾をしたんです。すごい楽しかったです。
――そうなんですか。瑠美奈さんにとっては、遥香さんはじめ先輩たちがすごく素敵だから、それがモチベーションになっているとおっしゃっていたんですけれども、遥香さんはどうですか? お教室の仲間に恵まれているということですけれども、周りの仲間とか先輩から刺激を受けることはあります?
遥香さん:先輩もそうなんですけど、下の子もすごくて負けてられないという感じです。
――お教室全体で盛り上がっている感じですね。皆さんすごいですね、成績も良くて。コンクールにチャレンジするということは、始めた頃から当たり前のように付いていたものという感じなんですね?
遥香さん:そうですね。
――自然な中でチャレンジするといういうふうに、それが習慣づいてきたという感じですか?
お母さん:そうですね。コンクールだけではなくて、コンサートですとか、ステージを目標にして、いつもそこに向かって1年通して頑張っている感じですね。
――大体、年間いくつぐらいコンクールにチャレンジするんですか?
遥香さん:3つぐらいです。
――それ以外にステージもということですね?
遥香さん:そうです。
お母さん:コンサートだったり、発表会もあったりします。
――そういうステージも3つ、4つあったりするんですか?
お母さん:そうですね。あります。
――そうすると、2ヶ月に1回以上は、人の目とか耳に触れるタイミングがあるということですよね。
お母さん:そうかもしれません。
――結構ハードな感じがするんですけど、そんなものですか? 周りの皆さんも。
お母さん:教室では普通で、コンクールの前はみんなで集まってホール練習を先生がしてくださったので、そこでまた刺激をもらって、みんなすごい頑張っているので励みになったり。

――今回のeコンクールはエントリーから3ヶ月ぐらい、結果が全部出るまで4ヶ月ぐらい時間があったと思うんですけれども、予選の結果が発表されてから本選まで2ヶ月半ぐらいでしたよね。遥香さんは違う曲でエントリーされていましたよね?
遥香さん:はい、そうです。
――そのあたりというのは、同じ曲ではなくて別の曲で新たな気持ちで、というところに意識というのはあったんですか? 自分の中でやりたい曲として選んだんですよね?
遥香さん:先生と決めました。
――「この曲でいこうか」という感じ?
遥香さん:はい。
――審査員の先生方も、「短期間で仕上げていくということはすごく大事なんだ」ということをおっしゃっていたんですけれども、ご自分の中では、もちろんそれまでも演奏をされてきた曲とは思いますけれども、本選に向けて1ヶ月半向き合うというのはどういう時間でしたか?
遥香さん:eコンクール以外でも弾けるような曲だったので。
――そんなに特別という感じではなかった?
遥香さん:でも特別だったかな?
お母さん:先生と思い出の曲になりましたよね。
――普段の練習とかレッスンというのはどういうペースでやっていらっしゃるんですか?
遥香さん:レッスンは大体週に1回で、練習はもう生活の中心です。
――生活の中心が練習。すごいですね。
遥香さん:本当はそんなことないです。弾けない日もあるので。
――小学校6年生だと他の習い事とか忙しいでしょう? きっと勉強もあるし。
遥香さん:はい。
――その合間を縫ってという感じですか? それよりもピアノがメイン?
遥香さん:いや、習い事もあるので
お母さん:平日2時間とかね。
――どういうルーティンでやっているんですか? 朝起きたらすぐ弾いたりする?
遥香さん:朝は弾いてないですけど、学校から帰ってきて2時間くらい弾きます、大体。
――毎日?
遥香さん:はい、そうです。
――小学校6年生だと、今授業の時間は長いんですよね?
遥香さん:はい、そうです。
――結構帰ってくるのも遅いんじゃないですか?
遥香さん:遅い日だと4時くらいになります。
――そこから遊びに行ったりしないでピアノのレッスンという感じ?
遥香さん:そうです。
――そうなんですね。日々の練習のときは一人で向き合ってやる感じですか?
遥香さん:はい、そうです。
――お母さまはピアノの経験はあるんですか?
お母さん:私は楽譜も読めないんです。なので、子どもに音楽の楽しさを教えてもらっている感じです。
――それはそれで楽しそうですね。
お母さん:はい。本当にありがたいです。
――でも、お兄さんも先に習っていたということですけど、それはお兄さんの意思だったんですか?それともお母さまが「やってみたら?」みたいな話だったんですか?
お母さん:お兄ちゃんのときは、ご近所にピアノ教室をなさっている先生がいらして、お散歩で通るとピアノの音がして、「行ってみようか?」というのがきっかけで。
――それでご本人も興味持って?
お母さん:そうですね、はい。
――お母さまとしては経験がない中で、遥香さんがここまで頑張って、「真似できない」ってさっきおっしゃっていましたけれども、どんな思いでご覧になっていますか? 遥香さんのご活躍はそんなに簡単なことではないと思うんですよ、金賞とか1位とか取るということは。
お母さん:本人の頑張りがもちろんだと思いますけれども、先生と一緒に頑張るのと、お友達に恵まれてここまで頑張ってこられたんだなと、環境に感謝していますね。皆さん本当に楽しんで音楽を学んでいらっしゃるので。瑠美奈ちゃんも大人みたいなんですよ。
――本当にしっかりしてました。もうびっくりしました。小学校2年生でかなり自主性があってしっかりしているなという印象だったんですけれども。最初に、お兄さんが習われたお教室というのが、今のお教室ですか?
お母さん:主人の仕事で転勤が何度かあって、なのでお2人前の先生です。
――じゃあ、遥香さんにとっても3人目?
お母さん:遥香にとっては2人目の先生です。
――そういった環境とか先生との出会いは大事だと思いますか?
お母さん:本当に大事だと思います。やっぱり先生が引っ張ってくださってというところもありましたし。
――でも、なかなかそういう先生と出会えないというケースもたくさんあると思うんです。それも運とか、縁とかあるのかなと…。たくさんコンクールにチャレンジしてこられて、今回初めて開催したコンクールだったので、過去に前例がないわけですよね。どういうコンクールなのか、きっとわからない中でのエントリーだったと思うんですけれども、そこに躊躇するような気持ちはなかったですか?
遥香さん:あんまり気にしてなかったです。
――動画を撮って提出してというところは、あまり抵抗なかった?
遥香さん:そうです。
お母さん:緊張して。
――何回か撮り直したりしました?
遥香さん:2回くらい撮り直して。
――納得のいくものを出せたなという感じですか?
遥香さん:時間切れみたいな。
――撮り直しができると思うと終わりが見えないという。
お母さん:難しいですよね。
――でも、この中ではこれでという感じですか? それとも先生と相談したりして、これでいきましょうみたいな感じだったんですか?
遥香さん:もう自分で撮って出して。
――そうだったんですね。実際に出てみて、動画で審査をされる。予選については3人の先生からの講評が届いたと思うんですけれども、手応えとして「自分が思っていたとおりだな」とか、「全然違ったな」とかありますか?
遥香さん:大体わかる感じ。
――なるほどという感じ?
遥香さん:はい。

――これだけコンクールとかチャレンジされていて、きっとご自宅にもグランドピアノがあるんですよね?
遥香さん:はい。
――どのへんのタイミングで購入されたんですか?
お母さん:遥香が習い始めて1年弱で今の先生のところに来たんですけれども、新しい先生になったタイミングで「じゃあ、用意しようか」という感じでしました。
――先生から勧められてですか?
遥香さん:そうですね。
――やっぱり違うものですか?
遥香さん:全然違うと思います。
――どういうところが違いますか?
遥香さん:形も違うので、音の出方も違うかなと思います。
――本番はグランドピアノで弾くわけですから、同じ環境で練習もできるということになりますね。
遥香さん:はい。
――やっぱり大事だと思いますか?
遥香さん:思います。
――なるほど。今度、中学には普通に進学という感じなんですか?
遥香さん:はい、そうです。
――特に音楽の専門の学校ということではなく?
遥香さん:中学は普通の学校に行きます。
――「中学は」とおっしゃったということは、その後のビジョンはあるんですか?
遥香さん:まだ決定はしてないんですけど、一応あります。
――それはどういう方向なんですか?
遥香さん:音大の附属の高校。
――進学目指して?
遥香さん:はい。
――そうすると、ずっと続ける気持ちがあるということですね。
遥香さん:はい。
――ピアノはどんなところが楽しいですか?
遥香さん:作曲家によって曲の魅力があったり、弾く人によっても違ったりするのがすごいことだなと思います。
――そういう中で、遥香さんはこれだけ結果を残しているわけですけれども、自分の強みは何だと思いますか?
遥香さん:よく褒めてもらえるのは、音色です。
――具体的にはどういう音色と言われます?
遥香さん:音がきれいと言われます。
――それは響きとかそういうことも含めてということですか?
遥香さん:どうかな。難しいですね。
――ご自分ではどう思いますか? そういうところを意識して演奏していますか?
遥香さん:高音のところは、特にきれいな音が出るように聴いて弾いています。
――自分の演奏を聴きながらということですか?
遥香さん:そうです。
――さっき同じ作品でも演奏家によって違うというお話がありましたけど、いろんな演奏家の演奏も聴いたりするんですか?
遥香さん:はい。CDを聴いたりします。
――新しい作品に取り組むときに、どういう準備をしていますか?
遥香さん:例えば、YouTubeで弾いている人の動画を観るというのはしています。
――作品の背景とかそういったところも調べたりするんですか?
遥香さん:作曲家の本で見る、そんな感じで見てます。
――どのくらいからやっていました?
遥香さん:あまり小さいときはやっていなかったと思います。
――高学年になってからということですか?
遥香さん:はい。
――そういうことはご自分の演奏をするときに役に立ちますか?
遥香さん:はい。役に立つこともよくあります。
――具体的にどういうふうに役立つと思いますか?
遥香さん:難しいな。
――何か表現をするときにそういうことを意識するとか、イメージしながら演奏するとか、そういう感じなんですか?
遥香さん:モーツァルトだったら、オペラをイメージして弾いたりしてます。
――レパートリーはどれくらいあるんですか?
お母さん:そんなにたくさんは…。
遥香さん:そんなにたくさんない。
お母さん:どれくらいあるかな?現在進行中のものだと、教本をいくつか弾いて。
遥香さん:教本とシューベルトとショパンとかもやっています。
――作曲家によって得意不得意とかありますか?
遥香さん:ベートーヴェンはあまり音が出ないので、ベートーヴェンは得意じゃないんだろうなと思います。
――逆にこの作曲家は好きとか、この作曲家は特にというのはいるんですか?
遥香さん:モーツァルトが一番好きです。
――その中で好きな作品はありますか?
遥香さん:今まで弾いた中ではソナタの330というのが好きです。
――どういうところが好きなんですか?
遥香さん:どの作品でもそうなんですけど、繊細というか面白いので好きです。
――面白い?それは演奏していて面白いなという感じ? 面白い展開だなとかそういうことですか?
遥香さん:音符の形?
――音符の並びとかそういうこと?
遥香さん:はい。変身というか、仕方というか、だんだん細かくなっていくところが好きです。
――難しそうですね。難しくても楽しめちゃうタイプですか?
遥香さん:どうかな?
――面白いなと思える?
遥香さん:はい、思います。
――練習はやめたいと思ったことないですか?
お母さん:あります。
――お母さんが?
お母さん:あります。
――どんなときにやめたくなっちゃったんですか?
お母さん:お友達と遊べないときじゃないですかね。誘われても行けないときとかが続いたりすると、ちょっと落ち込んでます。
――それはコンクールとかステージの前とかは、そういうお誘いも我慢して練習に励むという感じなんですか? そういうときにお母さまは「こういうふうにしなさい」といったりするんですか?
お母さん:本人が一番わかっているんですよね、行けないということは。でも、やっぱり行きたいから、行けなかったけど練習に入るまでに時間がかかったりということは。そういうときは、「気持ちを切り替えないと」ということは言いますけれども、大体本人がもうわかっているように思います。これは仕方ないと。
――何歳ぐらいからそういうふうにできるようになってきましたか?
遥香さん:最初から遊んでなかったので。
――それだけピアノが楽しいということですよね、きっと。
お母さん:そうですね。小さい頃は「楽しい」ばかりだったと思います。でも成長するほどに「こう弾きたい」というものがなかなか思うように形にできないときは、悔しそうというのはありましたね、横で見てて。
――そういうとき、お母さま、ご家族の皆さんはどういうふうにフォローをするんですか?
お母さん:優しくはないよね。自分がどうしたいのかということですよね。どういうふうに本番で演奏したいかという、その気持ちを本人がたぶん一番持っているので、「じゃあ、そのためにはどうしたらいいのかな?」という繰り返しで。
――それはお母さまもお父さまも同じようなスタンスですか?
お母さん:パパはすごく遠くから見守って。でも、行き先が遠かったり、出発が早いときはいつも送迎してくれて。なるべく身体に負担がないように送り迎えとかもして支えてくれるのはパパです。
――お父さまもきっと期待をしているんでしょうね。
遥香さん:だと思います。
――そう感じます?
遥香さん:はい。
――家族の応援の気持ちとか。
遥香さん:はい。
――さっき高校までの話をちょっと聞きましたけれども、将来的にどういうふうにしたいというのはありますか?
遥香さん:教えたりするのは楽しそうかなと思います。
――指導者ということですか。
遥香さん:はい。
――演奏家としてよりもということですか?
遥香さん:そっちのほうがあります。
――それはそれですごくはっきりしていますね。それはどうしてですか? 教えることに興味があるのは。
遥香さん:楽典がすごく好きなのでそういうのがあります。
――なるほど。先生方も、「とにかく遥香さんの演奏は大人っぽい」ということをしきりにおっしゃっていてたのですが、そういうあたりは意識していますか?
遥香さん:あまりしていないです。
――大人っぽく弾こうということは意識してない?
遥香さん:はい。
――そうなんですね。でも本当に高評価でした。素晴らしかったです。今日は長々とありがとうございました。
遥香さん:ありがとうございました。
年が明けてからも精力的にレッスンに通っているという遥香さん。 この春から中学生、さらに演奏に磨きがかかることと思います。今後のご活躍が楽しみですね。