全日本ピアノコンクール

竹島香織さん

今年度、アマチュアO56の部で最優秀賞に輝いたのは、竹島香織(たけしまかおり)さん。高校生以降ピアノを弾く機会が減っていたところ、15年ほど前に、市民ホールでピアノの発表会で大人の方々のピアノの演奏する姿がとても輝いて見えたのをきっかけにピアノを再開し、少しずつレッスンに通うようになったそうです。そのレッスンの成果もあり、今回のコンクールに出場し、輝かしい結果を出しました。

いつかピアノのレッスンを再開したいという思いをかなえた

公益財団法人の事務局に勤務する竹島さんは、4歳からピアノを始め、毎週レッスンを続けていました。でも、高校生以降はレッスンも不定期になりピアノを弾くことが少なくなっていきました。30代の頃に、立ち寄った市民ホールでピアノの発表会を偶然聴かせていただき、大人の方々が舞台でピアノを弾かれている姿がとても輝いて見えました。いつかピアノのレッスンを再開したいという思いをずっと抱いていて、下の子が幼稚園に入ってしばらくした15年ほど前から少しずつレッスンに通うようになりました。

その後は子育てや仕事、介護などで何度か中断しましたが、平均月1回のピアノのレッスンを続けているそうです。

コンクールは、師事している村松恵子先生に薦めていただき出場を決めました。実は、数年前に別のコンクールを受けた際は、ピアノ以外のことで気に留めなければならないことが多く、全てが中途半端になってしまった経験があります。それ以来コンクールは自分には難しいと感じて避けてきましたが、今回はピアノの練習時間を以前よりも取れそうだったこと、コンクールに向けて練習をし、コンクールの舞台に立つことは、何にも勝る成長と経験に繋がることがわかっていたので、久しぶりに挑戦することにしました。

演奏中

2019年には、ピティナピアノコンペティションB2カテゴリー本選優秀賞、2024年ヨーロッパ国際ピアノコンクール一般B部門銀賞と結果を出してきました。

中学の頃は、本格的に音楽の道に進む方もたくさんいた教室で、競い合う雰囲気になじめず、ピアノとの距離が開いてしまったと言います。コンクールに挑戦することで、曲に対する練習をしっかりでき、本番の緊張感、いい面も悪い面も批評をもらえること、客観的に自分の演奏がわかるので、成長につながると思いました。

年齢に関係なく今後の成長に繋がるアドバイス

今回の全国大会での演奏に全く自信がなかったので、思いがけない最高位という結果をいただき、会場のフルコンサートピアノとホールが助けてくれたのだと思いました。コンクールを通していただいた審査員の先生方の講評は、アマチュアであることや年齢に関係なく今後の成長に繋がるアドバイスばかりで感激しました。課題である音楽性や響きを褒めていただけたこと、これは本当に嬉しかったです。完璧ではなかったけれど自分らしく演奏ができたこと、さらに素晴らしい賞をいただけたことに今は喜びで一杯ですとうれしそうに語ってくれました。

現在師事している村松恵子先生からは、いつもポジティブなお声がけをしてくださいます。今回の入賞を受けて「将来が楽しみ」というお言葉をいただき、うれしかったと言います。

ピアノの発表会の様子

ピアノを習わせてくれた両親に感謝を

音楽好きの母が1つ下の妹と共に習わせてくれました。20年以上のブランクがありましたが、今こうして形だけでも弾きたい曲が弾けるのは小さい頃のレッスンが土台にあるお陰です。今回、20年以上のブランクを越えて受賞したことを、母のおかげと思い、感謝を伝えました。母に「ピアノを習わせてくれて本当にありがとう」と伝えたところ、とても喜んでくれました。亡くなった父にも、心の中でありがとうと伝えました。

平日は食事を片付けた後に数十分間、仕事がお休みの日は、予定の合間に13時間練習するようにしています。アップライトピアノがありますが、ピアノがあるリビングは家族が勉強をしていたり、愛猫がコタツで寝ていたりすることが多いので、ほとんどヘッドホンをつけて消音モードで練習しています。音が出ていないので、家族は私が何の曲を弾いているのか把握していないと思います。時々友達に誘ってもらい、ホールを借りることもあり、そんな時は伸び伸び弾くことができます。

改めて、ピアノの魅力をお聞きすると、心の描写を音に乗せることができるところだと言います。さまざまなジャンルの音楽を聴いていると、ふいに懐かしいような情景が思い浮かぶフレーズに出合う瞬間があり、そういう時に幸せを感じます。最近は、弾く際も色々な思いを意識するようになりました。今回のコンクールの期間中に義母が亡くなり、コンクールで弾いたシャミナードの「秋」の情景に、仲良し夫婦だった義父母の人生が重なりました。ショパンのノクターンを弾く時は、子供たちの小さい頃からの思い出が重なると言います。

今はまだ自分の中でイメージしているだけですが、音で表現出来る技法を身につけでいくことが今後の目標だそうです。

今回の演奏ではミスタッチも多く、自分ではあまり満足できなかったのですが、評価してもらえたことは大きな喜びですと笑顔で語ってくれました。

できる限り最後までピアノを弾いて過ごしたい

辛いことは、ケガや病気で長期間弾けなくなることだと思いますが、ありがたいことに今までそういうことなく過ごせています。穴があったら入りたいと思うような舞台上の失敗、自分の演奏のダメなところばかりが目につき落ち込む、そんなことばかりですが、それは成長につながることと思い込むようにしています。

「一生のできる限り最後までピアノを弾いて過ごしたい」これに尽きます。こんなに無くてはならない存在なのに20年以上もほとんど弾かなかったなんて‥と自分にツッコミを入れたくなりますが、子供の頃には見つけられなかった音楽の面白さや魅力にたくさん気づくことができたのは、離れている期間も必要だったのかもしれません。

職場の窓からの風景。春の訪れとともに、職場の皆さんと窓越しに桜を眺めるのが毎年の楽しみ

ピアノは不思議な楽器で、同じピアノでも弾く人によって全く音が違って聴こえてきます。年齢を重ねたからこそ奏でることが出来る味わい深い音が出せるように、欲張り過ぎずゆったりと、進化ではなく深化を目指していけたらいいなと思っています。

家族の一員、猫のビビ。一緒に過ごす時間は、音楽と同じように心を癒してくれます

今の自分があるのは、ピアノと離れていた時間があるからこそと言う竹島さん。これからも、細く長くピアノを続けてほしいですね。

全国大会での竹島香織さんの演奏はこちら