一般U30の部の1位は、河内くるみ(こうちくるみ)さん。小学生の頃からピアノコンクールの魅力にハマり、現在も保育士として働きながら挑戦を続けています。明るく元気いっぱいな様子でインタビューに答えてくれました。
河内くるみさん
5歳からピアノを始め、小学校低学年の頃からコンクールに出場し始めたという河内さん。もともは先生に誘われたのがきっかけだったそうですが、発表会よりも目に見えて賞がもらえるところに達成感とやり甲斐を感じ、すっかりその魅力にハマってしまいました。
小学6年生の時から師事する井上祐子先生と
最初は地元のピアノ教室に通っていましたが、小学6年生の時に井上先生を紹介され師事します。最初に井上先生の所に行った時は、先生はもちろん生徒さん達も上手な人ばかりで、「練習室に行くのも緊張していました」と当時を振り返ります。以前は「曲を間違えないように、ただひたすら早く弾いていた」という河内さんですが、井上先生の一つ一つの音を大切にする的確な指導に触れ、ピアノの新たな魅力に気付いていきます。「本当に1音1音、音色の変化や魅力を教えてくださいます。そんな音も出るんだ!といつも感動と刺激の連続で、とても勉強させていただいています。」
普段は、小さい頃からの夢を叶え、保育士として働いています。音大に進学することも一時は考えたそうですが、「ずっと保育士になりたかったので。音大に行かなくてもコンクールには出場できるから、自分のやりたい仕事をしながらコンクールにも出続けようと決めました」。
お仕事では書類仕事などの事務作業はあまり好きではないそうですが、子ども達と触れ合える保育の現場では「大変なことは無いです!」と満面の笑み。子ども達といろいろなことを体験しながら、成長を間近で見られるところに喜びを感じています。ですが、子ども達は河内さんがこんなにピアノを弾けるということは知らないのだそう。
愛犬クッキーと近所の海岸をお散歩
また、ピアノも保育士の仕事も大好きですが、愛犬との時間も癒しです。
小学6年生の時にピアノのある大会で優秀賞だったらワンちゃんを飼ってもいい、という約束をして、ご褒美としてお迎えしたのが今の愛犬クッキー。休日に一緒に出かけて海岸をお散歩することもあるそうです。
平日は2〜3時間、休日は7〜8時間ほどピアノを練習していますが、コンクールと勤め先の保育園のお遊戯会の時期が重なってしまった時には忙しくて寝不足になることも。自宅では23時までピアノが弾けるので、時間いっぱいまで練習して、23時を過ぎてから保育園の準備に取り掛かることもあり、その時は大変でした。
2023年、全国大会での様子
河内さんが考えるコンクールの魅力は、まず舞台で弾けること。勝ち進むほど会場が大きく有名なホールになり、たくさんのお客さんにも聴いてもらえます。また、審査員の先生にしっかり見ていただいて、順位だけでなく講評をもらえるのも勉強になってやり甲斐を感じられます。
今回弾いたメトネルの『忘れられた調べ 第1集 Op.38 第3曲 祝祭の踊り』は井上先生のすすめで選曲しましたが、「舞曲だからすごく楽しいところもありつつ、1曲の中でいろいろな表情の変化があって面白いなと思って選びました」とのこと。
楽譜には「バランス」とたくさんの書き込みがあり、多くの箇所で意識して演奏しました。また踊りの曲だったため、拍子感も大切にすることを心がけてきました。
時代背景や曲のテーマについて調べたり、動画サイトなどを見て音のイメージを膨らませたり、様々な方法で研究を深めています。
この曲は2年以上の間弾き込んできて、今回の全日本ピアノコンクールで弾き納めにしようと決めていました。集大成に相応しく、一つ一つの音やフレーズをしっかり考えながら弾き、積み上げてきた成果を本番で存分に発揮できたようです。「この曲を弾くのも最後だから、思いきりというか、自分らしい演奏ができたらいいなと思って。緊張もなくのびのび弾けたので良かったなと思います。」
そんな河内さんも、井上先生についたばかりの中学・高校生の頃は、目標だった全国大会になかなか届かず、苦しい時期を過ごしました。その頃から、レッスンで自分の姿を録画するようになります。すると、客観的に自分の演奏を見聞きすることができ、どこがうまくいっていないのかが明確になるのだそう。レッスンから帰宅して見返しては、自分の課題を見つけて書き出し、細かく練習内容を決めて音の研究をしていきます。自宅でも録画して見返して、の繰り返し。そうしてギャップを埋め、理想の演奏に近づけていく地道な作業です。
この練習方法は、今もずっと続けています。
現在は、新しい曲に取り組み始めたばかり。ある程度弾けるようになるまでに2〜3ヶ月はかかるそうです。今後もコンクールに挑戦していきたいと、気持ちを新たに頑張っています。
「今回の全日本では自分の思っているように弾けて、素晴らしい賞をいただけたので、すごく嬉しかったし、自信につながりました。この経験を活かして、もっと魅力ある音で、自分の表現したいことを届けられるような演奏ができるよう、日々取り組んでいきたいです。」
保育士のお仕事も、コンクールへの挑戦も、全てに全力投球!コンクールで結果が出ずに落ち込んだ時も、「一晩寝たら忘れて元気になる」という河内さん。その持ち前の明るさと前向きさも、勝負強さの秘訣なのかもしれません。
※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは2024年10月初旬に行いました。