5歳という年齢からは想像できないほどの豊かな表現力と繊細なタッチで、観る人の心をつかんだLao Yuet Yin(ラオ・ユイン)さん。未就学部門の金賞に輝いたYuet Yinさんとご両親にお話を伺いました。
Lao Yuet Yinさん
Yuet Yinさんがピアノを始めたのは、3歳の時。きっかけはピアニストであるお母さまの「娘にもピアノの楽しさを知ってほしい」という想いからでした。現在はお母様が日々の練習に付き添いつつ、週に一度、近隣のピアノ教室にも通っています。自宅での練習時間は平均1時間ほど。Yuet Yinさんの気分や体調によって変動はありますが、基本的には楽しくピアノと向き合っているそうです。
普段の練習では、インターネットで購入した楽譜の中から、本人が好きな曲を選んで弾くことから始まります。その後、コンクールの課題曲や少し難易度の高い楽曲、指のトレーニングを目的とした曲なども取り入れているそう。とはいえ、練習の中心にあるのは常にYuet Yinさんの“好き”な気持ちです。
お母さまに、自宅での練習をどのようにしているか尋ねると「曲を弾く前に、その曲のイメージをストーリーとして教えるようにしています。たとえば『シンデレラ』のようなYuet Yinさんでも分かる例を使って、感情や情景が頭に浮かぶようにしてあげています」とのこと。Yuet Yinさんは、曲に込められた感情を表現する力に長けており、その音楽的なセンスは幼いながらも際立っています。
3歳、初めてのコンクール参加
初めてのコンクール出場は、ピアノを始めて間もない3歳の頃。最初は「ステージに立つ」という経験をさせたいという思いでご両親がエントリーしたそうです。「小さいうち、まだ怖さや緊張を知らない状態でステージを踏ませたかった」とお母さま。舞台に立つことで得られる達成感や、きらびやかなドレスに憧れる気持ちが、Yuet Yinさんをコンクール好きにさせた一因だったといいます。
その後も多くの舞台を経験し、2024年10月には初めて大阪で開催された国際音楽コンクールにも参加。母娘2人きりの遠征で、重い踏み台を持っての移動など、決して楽な道のりではありませんでしたが、音楽と旅の記憶がYuet Yinさんの中にも深く刻まれたようです。
とはいえ、小さな子どもに日々の練習を続けさせることは容易ではありません。3〜4歳の頃は集中力や体力の面以外にコミュニケーションにも課題があり、同じことを何度も繰り返して伝える必要があったそうです。5歳になった現在では意思疎通も以前に比べスムーズになり、練習への取り組みも格段に向上しました。
「練習というより、ピアノで遊ぶのが好きですね。他の子どもが弾いている映像を見せたり、いろいろな曲を聴かせたりもしているので、その中で“この曲も弾いてみたい”という気持ちが芽生えていくようです。」
大阪への遠征コンクール後、観光へ
最近では、湯山昭『お菓子の世界』の『ポップコーン』がお気に入りで、来月末のコンクールに向けて、日々練習を重ねているとのこと。曲に込められた軽快なリズムや世界観に、Yuet Yinさんらしい自由な表現が加わるのが楽しみです。
ピアノだけではなく、折り紙や絵本も大好きなYuet Yinさん。幼稚園の先生からは「手先が器用で、字や箸の使い方も上手」といわれており、そうした感覚面の鋭さもピアノの技術に活かされているのかもしれません。
いたずら好きで社交的な一面もあり、年齢を問わず多くの友達と仲良く遊ぶ、明るい性格の持ち主だそうです。
「水泳も習っていますが、やっぱり一番好きなのはピアノですね」とお父さま。すると、横からYuet Yinさんが「チーターも好き!ハローキティも!」と元気いっぱい答えてくれました。
弟との連弾
これからの夢について尋ねると、「バイオリンや他の楽器とも一緒に演奏してみたい」とのこと。オーケストラ、中でも特に「バイオリンの音が好き」で、自分でも弾いてみたいという気持ちがあるそう。今後、Yuet Yinさんが音楽仲間とともにアンサンブルを楽しむ日も近いかもしれません。
一方、ご両親は親としての気持ちを次のように語っています。「これからの時代、AIに取って代わられてしまうことが増えるでしょう。でも音楽は、人の心を動かす力がある。ピアノが好きで、本人が続けたいと思ってくれるなら、ぜひその道を応援したいと思っています。好きなことで仕事ができれば、それが一番の幸せですから。」
演奏技術だけでなく、感性や個性を大切に育みながら歩んでいくYuet Yinさんの音楽の道。5歳の彼女が紡ぐ一音一音が、これからどんな未来を奏でていくのか、楽しみに見守っていきたいですね。
※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは2025年3月下旬に行いました。
全国大会でのYuet Yinさんの演奏はこちら。