連弾部門は、年齢別に3つの部門があります。今年度、O16の部で最優秀賞に輝いたのは、渡辺真生(わたなべまお)さんと小倉莉子(おぐらりこ)さん。昨年の夏に初めて2人で連弾をしてコンクールに出場し、とても楽しく、また連弾のコンクールに出たいと思って本コンクールに挑戦。最初の連弾でいきなり最高位を受賞するという結果を出したお2人。ふだんの練習や連弾の魅力などについてお聞きしました。
渡辺真生さん
小倉莉子さん
昨年組んでから1年目で最高位を受賞
連弾:O16で最高位を受賞した渡辺さんと小倉さんですが、昨年初めて組んでから最高位は初めてだそうです。組むことになったきっかけは同じ地区の出身でコンクール等で顔を合わせることも多く知っていたと言います。同じ大学に入り、この人となら一緒に連弾したいと思い、渡辺さんからお誘いしたとのことです。
昨年の夏に初めて2人でコンクールに出場し、とても楽しく、また連弾のコンクールに出たいと思ったから、今回のコンクールに出場しましたといいます。「ピアノは、言葉では表現できない、音の響きの美しさや感情の表現をできるところが好き」と言う渡辺さんは、今19歳で、9歳から連弾を行っています。ソロの受賞歴も素晴らしく、以下のように実力が認められています。
コンクール本番(第48回ピティナ・ピアノコンペティション 全国大会(王子ホール)にて)
渡辺さんの受賞歴は以下の通りです。
ピティナ・ピアノコンペティションの全国大会にてC級入選、連弾初級A入選、連弾中級A・Bベスト賞、連弾上級銀賞、グランミューズDカテゴリー2位。
第24回大阪国際音楽コンクールにて、アマチュア部門ヴィルトーゾコース第2位。
第33回日本クラシック音楽コンクールピアノ部門大学女子の部第5位。
渡辺さんは、連弾の魅力を「ソロだったら左手と右手だけ、連弾は4手になり、メロディの幅が広がり、2人になることで演奏の音色や感情表現も深くなります」と語ります。
小倉さんは今回の出場理由を、昨年の夏に出場した別のコンクールの全国大会で、悔しい終わり方をしたので、リベンジをしたかったからと言います。もともと小倉さんは、エレクトーンを習っていて、小学校入学した年に、ピアノへ転向しました。
「ピアノは弾き方次第でいろいろな音色が奏でられるところと、弾く人によって音色が全然違うところがおもしろい」と語ります。
現在、教育学部の4年生で、金融機関に就職も決まっている小倉さんの受賞歴もソロも含めた輝かしいもの。第43回ピティナピアノコンクール連弾中級B全国大会ベスト11賞、第48回同コンクールDカテゴリー全国大会入選しています。
小さい頃から全国大会で金賞を取ることを夢見ていたので、「やっと夢が叶った」という達成感が大きかったですとうれしそうに語る小倉さんです。
今回のコンクールでは、お2人とも長時間準備をしたのに、ミスをしてうまく弾けなかったのが心残りでしたが、それでも、最高位を受賞してとてもうれしく、夢のようだと輝く笑顔で語ってくれました。これからももっと聴きたいと書いてくださった講評が心に残っています。私達のこれからのことを考えてくださり、ふたりの可能性を感じてもらえたと実感し、とても嬉しかったです。
母親といっしょに4人で練習することも
ふだんは、大学の演習室で2人の母親も含めて、4人で試行錯誤しながら練習しているとのこと。仲の良い親子でほほえましいですね。
ソロの練習では小倉さんは、自分の演奏を毎回録音してその都度聴きながら、よりよい弾き方になるようにしています。1人で練習していて行き詰まったときは両親や学校の友だちにアドバイスをもらうようにしていると言います。
渡辺さんは、独り暮らしで、部屋には電子ピアノが置いてあり、家でも練習できる環境です。大学の音楽科にはグランドピアノがある演習室で週3回は練習するそうです。
練習風景(いつも練習に使わせていただいている大学の音楽ホールにて)
お2人に、ピアノや音楽の好きなところを伺いました。
感情表現をとても大事にしています。連弾の場合は、相手とのバランスや相性もあり、演奏表現は一人より2人の方が広がっていきます。小倉さんと演奏など相談、録音して、改めて聞いて、ここをこうしたほうがいいと相談して決めると渡辺さんは言います。2人は、そういった方向性が似ていてぶつかることはほとんどないそうです。
小倉さんは、「人によって音色が違う、コンクールでも課題曲は同じ曲なのに、解釈とか人柄が出る音色に出ます。同じ音色の人はいない、連弾だとそれが倍増してとても楽しいんです」と話してくれました。全国から集まる人たちの演奏をきいていても楽しい、コンクールへの参加は刺激的だと言います。
けがからから学んだこと
渡辺さんにはとてもつらいこともありました。中学1年の時、運動会の障害物競走で平均台から落ちて腕を骨折し、今も後遺症があります。今でもずっと左手の指が痺れているそうです。そのときはピアノをやめようとも思いましたが、つらい経験があったから、そのおかげで音色の大切さに気付くことができました。指の痺れと闘いながら今でもピアノをつづけることができました。それまでは勢いだけでアップテンポの曲ばかり弾いていたのですが、骨折後、音色や雰囲気を大切に、指の使い方など様々な面でレベルアップしたと語ってくれました。
小倉さんのつらい経験は、頭の中で思いえがいているように弾けないことだと言います。楽譜や音源を聞いてイメージするのですが、実際やっているとうまくはいかない。その壁にぶち当たった時、自分にイライラしてしまいます。コンクール等で思うような結果が出なかった時もつらいです。どちらも経験して、上位にはいりたい気持ちは強いので、それがバネになって次につながります。
ヤマハイノベーションロードにて(小倉莉子)
ヤマハイノベーションロードにて(渡辺真生)
浜松市のヤマハイノベーションロードに行き、グランドピアノの弾き比べやいろいろな楽器を体験しました。観光したり、美味しいものを食べたりするのも、また、楽しみのひとつです!
ずっとピアノを続けていきたい
お2人に将来のことをお伺いしました。
渡辺さんは、学校の音楽の先生になるのが夢です。各学校に1人しかいないから厳しいですが、採用試験のための勉強も頑張っています。これから中学の教育実習なので下準備もしているとのこと。
小倉さんは、「ピアノは趣味として続けていきたい。弾きたい曲がたくさんある。渡邊さんとの連弾でも挑戦したい曲がたくさんあります。2人のピアノの相性もよいので、いろんな曲を弾きたいですと語ってくれました。
全国大会での渡辺真生さん・小倉莉子さんの演奏はこちら。