双子ならではの息の合った演奏で、連弾:U9の部において金賞を受賞した日浅茉莉さん・優莉さん姉妹。息ぴったりの演奏の裏にある日々の積み重ねと工夫、そしてピアノを心から楽しむ気持ちついて、2人に語ってもらいました。
日浅茉莉さん・優莉さん
2人がピアノを始めたのは3歳の時。もともと2人のお姉さんがバレエを習っていたものの、塾との両立が難しくなった時期に「何か代わりに続けられそうな習い事を」とお母さまが探していたところ、知人の紹介で現在も師事する巣山千恵先生に出会いました。お姉さんに続いて、2人もピアノの世界へ。今ではすっかり生活の一部となっています。
普段の練習では、1日30分から1時間半ほど、それぞれが個別にピアノと向き合い、週に3回ほどは連弾の練習も行っています。ピアノは1台しかないため、姉妹で譲り合いながら練習時間をうまく調整しているのが印象的でした。
師事する巣山千恵先生と発表会の後の様子
今回のコンクールでは、連弾での出場ということで、息を合わせる難しさが大きなテーマとなりました。2人で呼吸を合わせて弾き始めたり、顔を見合わせてタイミングを取ったりと、工夫を重ねながら音をひとつにしていきました。
「なかなか合わさらなかったので、そこが大変でした」と語る優莉さん。その努力は、審査員からの講評にも反映されていました。「曲の最後の、2人で合わせるところがきれいに合っていた」と評価された一方で、「メロディーをもっと感じながら弾くとより良い」とのアドバイスも受け取り、今後の課題として真摯に受け止めています。
レッスンでは、先生の指導を動画で記録し、週に5〜6回見返して復習しているとのこと。そのアイディアはお母さまの発案で、1回のレッスンを何度も振り返ることで理解を深め、日々の練習に活かしているそうです。
レッスンで扱う曲については、2人それぞれが自分に合ったものを先生と相談しながら選んでおり、現在は茉莉さんがショパンの『練習曲第10番』、優莉さんが『子犬のワルツ』に取り組んでいるとのこと。「あえて違う曲を選んでいるんです」と教えてくれたように、お互いの演奏から学び合いながら、それぞれの個性を伸ばしています。
今回の連弾曲について、印象に残っている部分を尋ねると、「ゆっくりしたところと、2人で合わせて速くなるところのメリハリがあって、そこが好き」と優莉さん。静けさと動きのある構成が、2人の感性にぴったり合っていたようです。
好きなジャンルは、茉莉さんが「きれいな曲」、優莉さんは「ディズニーのジャズ」と、それぞれに個性がにじみます。将来的に弾いてみたい曲についても、茉莉さんは「久石譲さんの『Summer』」、優莉さんは「ディズニー映画『モアナ』の曲」と答えてくれました。
夏祭りの浴衣姿
ピアノ以外の趣味の話になると、2人ともゲームの「マインクラフト」が大好きだそう。自由に建物を作るなど、自分だけの世界を創造できるのが楽しいようです。
また、学習面ではそろばんと塾にも通っており、そろばんへの熱意もかなりのものです。「そろばんの暗算で準3級に一発合格したい」と語る茉莉さん。優莉さんも「お父さんが5段だから、自分もそこまで頑張りたい」と意気込みます。そろばんの魅力については、「考えなくても指を動かしていたら勝手に答えが出てくるところがいい」「割り算の答えがきれいに出た時が気持ちいい」と独特の視点で話してくれました。
ピアノについての今後の目標をたずねると、優莉さんは「難しい曲に挑戦していきたい」と答え、具体的にはリストの『ラ・カンパネラ』など、お姉さんが弾いている曲に憧れがある様子。一方の茉莉さんは、「好きな曲をもっときれいに弾けるようにしたい」と語り、より表現力を磨くことが目標のようです。
スペシャルヴェニュ国際音楽コンクールの動画撮影の様子
音楽の道に進みたいかという問いには、どちらも「ピアニストにはなりたいと思っていない」とはっきりした答えが。ピアノはあくまで趣味として楽しみながら、ゆるやかに続けていくつもりとのことでした。
将来の夢については、茉莉さんは「動物園の獣医さんになりたい」と語ります。動物が大好きで、現在飼っている犬や猫のうち、目が見えなくなってしまった犬を治してあげたいという思いが原点です。1階で暮らす祖父母と2階で暮らす自分達一家で、犬と猫を1匹ずつ飼っているというユニークな生活スタイルの中で、動物たちとの日常が夢へとつながっています。
優莉さんの夢は「歌手になること」。小さい頃から歌が大好きで、アリアナ・グランデの曲やディズニーソングをよく歌っているそうです。現在はバスケットボール部に所属しており、音楽とスポーツの両立を楽しんでいます。英語の歌にも親しみがあり、学校の英語教育や家庭環境も相まって、歌詞を通して自然と英語に触れている様子がうかがえました。
また、2人のお姉さんが通う学校の修学旅行などで訪れたことがきっかけで、シンガポールやベトナムなどアジアの国にも関心があるとのこと。ヨーロッパにも興味はあるものの、「遠いしちょっと危なそう」と現実的な感覚も持ち合わせていました。
今後については中学受験を控えており、ピアノの練習も少しペースを落としながら続けていく予定です。「ちょっと手を抜きつつ、でも練習は続けたい」と、茉莉さんは笑顔で話してくれました。
最後に、2人に今回の受賞を受けての気持ちを聞くと、優莉さんは「もっと難しい曲に挑戦して頑張りたい」、茉莉さんは「好きな曲をきれいに弾けるように努力したい」と、それぞれに前向きな言葉を聞かせてくれました。
同じ時間を共有しながら、互いの個性を尊重し、高め合っている茉莉さんと優莉さん姉妹。これからも2人の音楽と成長が、どんなハーモニーを奏でていくのか、とても楽しみです。
※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは2025年4月上旬に行いました。
全国大会での日浅茉莉さん・優莉さんの演奏はこちら。