全日本ピアノコンクール

大角怜さん・鈴木捷瀬さん

連弾部門は、年齢別に3つの部門があります。今年度、U15の部で最優秀賞に輝いたのは、大角怜(おおすみれい)さんと鈴木捷瀬(すずきはやせ)さん。同じ先生に師事する2人は、ピアノの相性も良く、連弾を始めて5年。なかなか一緒に演奏する機会がないという二人が練習の回数が少ないながらも高いレベルを維持する秘訣とは…

大角怜さん鈴木捷瀬さん

2人はソロでも輝かしい受賞歴を誇ります。流山市立南流山中学校2年の大角さんは、第15回 ヨーロッパ国際ピアノコンクール自由曲コース中学生部門にて全国大会金賞を受賞。渋谷教育学園渋谷中学校3年生の鈴木さんは、ピティナ・ピアノコンペティションで2019年B級、2024E級全国大会入選、2022D級全国大会ベスト賞、第13回日本バッハコンクール中学B部門にて全国大会金賞第1位を受賞しています。2人とも脂がのっている時期です。

短時間でも集中したい

連弾を始めたきっかけや連弾の魅力は?

2人は共通に師事している金川聡美先生からの奨めで5年前に連弾を始めました。初めての連弾演奏はフォーレ作曲ドリー組曲よりスペイン舞曲を演奏しました。

「年に一度教室の発表会で演奏を重ねるうちに、もっと上手くなりたい!と思うようになりました」という大角さん。ソロで参加していたコンクール(ピティナ)に連弾部門があることを知り、金川先生に相談して、昨年度から連弾もコンクールにチャレンジするようになりました。初エントリーの昨年は僅差で全国大会に進むことが出できなくて、悔しい思いをしました。「でも2人で課題曲をピカピカに仕上げる工程はとても楽しく、さらにレベルアップするために、今回は自由曲で参加できる全日本ピアノコンクールに出場しました」と大角さんは言います。

2人の師事する金川聡美先生と

曲が形になっていく楽しさがあると言うお2人ですが、普段は、個々の練習後、合わせることで課題を見つけ、1つずつ解消していく達成感もあります。譜読みして曲がぼんやりしているうちからはっきり見えてきて仕上がってくる流れ、わくわくする」と鈴木さんは言います。

初めての連弾は5年前。フォーレ作曲ドリー組曲よりスペイン舞曲を演奏

大角さんがピアノを始めたきっかけは、友達が教室でピアノを弾いている姿をみて、やってみたいと思ったから。その日のうちにピアノを習いたいと母にお願いしましたが、ピアノは毎日練習するのがとっても大変だよと反対されてしまいました。1年経っても私の気持ちが変わらなかったので、母がピアノの体験レッスンに連れていってくれました。その時のわくわくした気持ちは今でも忘れられません。

金川聡美先生に出会って、「楽譜どおり弾けるようになってからが先生の出番だよ」と教えていただき、譜読みを終えた曲に音楽がついていくのがとても楽しくて、私はますますピアノに夢中になりました」。

受賞した時の気持ちは

大角さんは、「受賞を聞いて、神奈川県立音楽堂という、響きの良いホールで演奏の機会をいただいた上に、金賞まで受賞することができて、とてもうれしかったです。私は舞台に上がると、いつも緊張で手足が震えてしまい、力が出せずにいました。でも、来年高校受験を控えている私にとって、捷瀬くんと演奏出来る貴重な機会と捉えて、初めての全国大会を楽しみたいと、心に決めました。演奏直前に捷瀬くんが、『れいちゃん、ゆっくり弾こうね』と声をかけてくれて、落ち着いて弾くことができました。力を出し切ることができて、本当に良かったです。いつも熱心に指導してくださり、私たちの演奏を磨いてくださる金川聡美先生に感謝の気持ちでいっぱいです」と言います。

前回は悔しい思いをした2人ですが、今回のコンクールでは最高位で2人ともとてもうれしそうです。2人が連弾で結果を出せた秘訣についてお聞きしました。

「私たちは、キャラが違っています。演奏もふだんのキャラも違う。自分が見つけられない表現も教えてもらえる、お互いにないものを身につけられる」と大角さんは言います。

鈴木さんは、「5年前から大角さんと連弾を始めて、とても楽しかったし、去年ピティナでは僅差で悔しさ、リベンジしたいという思いが強くありました。今回最高位を受賞し、とてもうれしく、いつも熱心にご指導いただいている金川聡美先生に感謝の気持ちでいっぱいです」と言います。

合わせ練習ではフレーズの持つ役割を再発見し、曲への理解が深まる

5年間の積み重ねでうまくいくように

普段は、お互いに学校や部活に塾で忙しく、合わせる練習はレッスンの日程直前に一度だけ。普段はそれぞれのパートを練習して、どんな風に音楽を作るか考えています。そして短時間で合わせ練習をして折り合いをつけています。

大角さんは、常に一緒に練習できない難しさがあると言います。なかなかイメージで伝えるのが難しい、言語化することが大変です。相手に伝える前に伝えたいことや相談することをわかりやすく伝えるプロセスが難しい。大角さんは、弾いているときに自分の楽譜だけでなく相手の楽譜も見て、ストーリーをつくると言語化しやすいのでそうしているそうです。そうすると自分の中のイメージ―がくっきりするそうです。

普段は合格基準の高いエチュードを重点的に練習している

鈴木さんにも連弾での工夫をお聞きしました。

「言葉を介さずとも人々に感情を伝えられるところが音楽の魅力。ソロだとうまくいかないところを練習して仕上げますが、2人の都合が合わないことも多く、自分がこうやりたいだけではできないので、大角さんのイメージも受け止めるようにしています。ふだんはLINEでやりとりすることもあるし、だいたいは2人で合わせる時に意思をくみ取って合わせます。5年間組んでいるので、直前一回で合わせるだけで通じ合う」と言います。

今回金賞とれた理由は?

大角さんは、本番で暴走しちゃうことが多いのですが、今回は落ち着いて弾けたと言います。鈴木さんは、2曲の雰囲気の違いをしっかり出せたことだと言います。自由曲の2曲を選んだ理由をお聞きしました。それぞれの得意分野で選びました。1曲目は捷瀬君の得意な曲、2曲目は私の得意な曲を選びました。

ピアノ、音楽全般の好きなところをお聞きしました。

ピアノは独りアンサンブルのようなもの。

鈴木さんが考える音楽の魅力についてお聞きしました。

私は言葉を使って伝えるのが苦手なので、ピアノでは、言葉を介さずに伝えられることができます。中学に入ってチェロをやり始めましたが、ピアノやチェロでは、自分の思いを素直に表現できるのが魅力です。

将来の夢や目標は?

大角さんは、ピアニストになりたいという気持ちより、一生ピアノに触っていたいという思いがあるといいます。日々の生活の中でピアノを弾いていたいそうです。

直近の夢は金川聡美先生が代表を務めるNPO法人子どもえんてらすが主宰するインクルーシブコンサートに出演することです。金川先生に出てみないと言われ、楽しみにしているとのことです。

鈴木さんも生涯音楽に触れあい続けたいという思いがあります。

まだ将来のことは具体的に決まっていない2人ですが、これからも連弾でさまざまな曲に挑戦してほしいですね。

文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
インタビューは3月行いました。

全国大会での大角怜さん・鈴木捷瀬さんの演奏はこちら