今年度アマチュア:U55の部で最優秀賞に輝いたのは、足立卓也(あだちたくや)さん。4才からレッスンを開始し、高校生まで地元(愛媛)のピアノ教室でレッスンしていました。就職後は中断もありつつ細々ピアノを続けていましたが、コロナ禍の外出禁止令の中でピアノ愛が爆発し、ピアノに本気で向き合うようになったという足立さんのピアノへの情熱について伺いました。
コロナ禍でピアノを再開、ピアノ愛が爆発
足立さんは、早稲田大学政治経済学部卒業、現在金融機関に勤務しています。
祖父が中学の音楽の先生をしていた関係で家にピアノがあり、両親も趣味で楽器を演奏していたので、物心ついたときにはピアノを開始していたそうです。4才からレッスンを開始し、高校生まで地元(愛媛)のピアノ教室で栗田里美先生に師事。大学入学で上京し、ピアノサークルに所属する傍ら新しく出会った西尾佳菜先生に師事。就職後は引き続き西尾先生と、会社の上司の奥様の紹介で出会った地元の秋葉芳美先生に師事しています。
就職した金融機関では、飲み会などが多く、飲酒後はピアノの練習ができないので、練習が滞りがちになりました。その後コロナ禍となり、在宅ワークの時期もあった。外での活動制限もあり、家での生活に時間ができてピアノを再開。1か月前に買った新居では、グランドピアノがあるそうです。
所属する社会人ピアノサークルの演奏会にて(演奏し終えて安堵している表情)
自分の演奏への評価を知りたくてコンクールに挑戦
そんな足立さんですが、コロナ禍の外出禁止令の中でピアノ愛が爆発し、ピアノに本気で向き合うようになったといいます。コンクールに挑戦するようになったきっかけは、自分の演奏がプロの方々(審査員)からどのように評価されるのか知りたかったからだそうです。
ピティナピアノコンペティショングランミューズB1カテゴリー2022年度全国大会第3位、2024年度全国大会入選。2023年度第14回ヨーロッパ国際ピアノコンクール in Japan一般B部門全国大会金賞。輝かしい受賞歴をもつ足立さん。印象に残っているのは、第14回ヨーロッパ国際ピアノコンクール in Japanでの金賞だといいます。初めて最高位の賞を取れたからです。
平日は仕事が終わった後時間がある時に練習していますが、全くできない週もあります。休日は土日のどちらかでは必ずピアノを弾くようにしています。イメージ先行型の足立さんは、初めて練習する曲は事前にYouTube等で演奏を聴きまくって、それから練習に取り掛かることが多いそうです。
「現在の秋葉先生のレッスンでは、曲全体、モチーフ、一音一音まで様々な解釈を教えて頂けるので、とても入りやすくイメージの幅が広がります。それに加えてテクニカルなアドバイスもきっちり厳しく教えていただけるので、レッスン後に録音を聴き返しながら反復練習を行なっています」と語ります。
コンクールに出場するからには上位をめざしたい
今年で38歳となる足立さんですが、「音楽は競うものではないかもしれませんが、コンクールに出場するからには上位を目指したいと思っていたので、受賞した際は素直にとてもうれしかったです。コンクールで得られた舞台経験と多くの審査員の方々からいただいたアドバイスを糧に、引き続き研鑽に努めていきたいと改めて思いました」と顔をほころばせて話します。
今回のコンクールで演奏した曲名は、ブラームス作曲の「4つの小品」第1番「間奏曲」・第4番「狂詩曲」です。ピアノの魅力は、心を激しく揺さぶられる瞬間に出会えるところです。今回ブラームスは、初めて演奏しました。秋葉先生に、足立さんにはブラームスが合うと思うと言われ、いよいよブラームスに挑戦しました。ピティナでも演奏し、自信もついてきたと言います。挑戦する前に、ブラームスやこの曲についても深く勉強しました。始める前は、パッとしないと思っていた足立さん。どれも決め手に欠けるかなと。いざ取り組んでみると、ブラームスは口下手なタイプで、ピュアな人。シューマンの奥さんであるクララへの片思いで一生を終え、愛し合うことはなかったけれど、深い信頼で結ばれていた。この曲にはクララと同じ年に亡くなったブラームスの複雑で強い思いが込められています。
所属する社会人ピアノサークルの演奏会にて(念を込めています)
非日常の旅で感性を刺激しています(場所:ニューヨーク)
予選通過後に挑戦したスカイダイビング
(飛び降りる勇気と緊張は、舞台での本番演奏程ではありませんでした。)
将来は一人でコンサートを
今回の演奏では、ミスタッチも多かったけれど、ピティナから熟成させてきた曲への思い、背景も含めて理解した気持ちを受け止めてもらえ、最高位を受賞できたのだと思うという足立さん。講評のコメントが具体的で改善しやすいアドバイスをもらえることでより一層成長できると言います。
どんな楽器も、コンクールに出ることで、成長すると語る足立さんですが、「受賞者のコンサートがありとても楽しみです。コンクールを刺激に成長するので、舞台経験は何百回の練習に勝るものですね」。
「最近、アマチュアピアニストの方々との繋がりが一気に広がり、実際にコンサートを開催されている方がいることを知ったので、表現や技術を磨く努力をし続けていけば、その先にチャンスが巡ってくる時があるのではと信じて練習に励みたいです。と思っていたところ、先日、アマチュアピアニストのつながりで数人でコンサートを広島でおこないました。1人20分の時間をもらい6曲くらい演奏。次は、東京や大阪でやりたい。
ちなみに1人のコンサートでは演奏する曲や音楽自体を少しでも好きになってもらえるよう、解説盛り盛りにしたいと思っています(笑)。生涯を通じてピアノを楽しめたら良いなと思っています」と将来の夢は広がる足立さん。きっと数年後には叶っているのではないでしょうか。
全国大会での足立卓也さんの演奏はこちら。