中学生の部は、太田市立太田中学校1年(出場当時)の柳幸俊成(りゅうこうとしなり)さんが、最優秀賞に輝きました。小学校6年生のときにも出場して銅賞を受賞、今回2回目のエントリーでした。お母様と一緒にインタビューに答えてくれました。
柳幸俊成さん
「当日は思うように弾けたと思うけれど、まわりの方の演奏もすばらしかったので、そこまで自信はありませんでした。全国から多くの方が参加するコンクールでレベルが高く、その中で最優秀賞や金賞を取ることはとても難しいことですし、私にとってもなかなかないことなので、驚きが大きいです」と俊成さん。幼稚園の年中からコンクールにチャレンジし続けているのは、自己研鑽のため。入賞することだけが目的ではありませんが、でもやはり入賞できると嬉しいと感じています。「これからも更にピアノの練習を頑張ろうと思いました」。
師事する壁谷文男先生から全日本ピアノコンクールを紹介されたことが、最初にエントリーしたきっかけでした。翌年も、ちょうど練習している曲やこれから弾いてみたい曲が課題曲に指定されていて、再度チャレンジしたいという気持ちになったと言います。そして、最優秀賞受賞。この1年を振り返って、「身長も伸びたし、力もついてきました。去年よりも力強い演奏ができるようになって、大きい音が出せるようになったことで表現の幅が広がったと感じますし、その表現力をつけることがいまの課題でもあります」。先生からアドバイスを受けながら、“成長に合わせた、いい体の使いかた”を探っています。
年長の秋から師事する壁谷文男先生と
小学校6年生の終わりから佐藤奏夢先生にも師事
俊成さんのお母さんは、音大在学中から近所の子どもたちに自宅でピアノを教えたり、卒業後は教師をしたりしていました。現在も中学校の音楽の教員です。出産を機に仕事は一度お休みしましたが、俊成さんの8歳上のお兄さんや6歳上のお姉さんにピアノを教えていたため、俊成さんが生まれたときにはすでに毎日誰かがピアノを弾いている環境でした。物心つく前から自宅でリトミック遊びをしたり、お兄さんお姉さんのピアノ発表会で当時1歳の俊成さんも舞台で一緒に踊ったり。3歳のときには“グー”でピアノを弾いて参加。「そのころからステージでピアノを弾くことが好きだったのかも」と振り返ります。
小学校2年生から太田芸術学校でヴァイオリンを習い、5年生のころからは和声と作曲、室内楽も学んでいます。中学入学後は、太田芸術学校付属オーケストラジュネスにオーディションで合格し、活動に参加。ピアノはもちろん、音楽に触れる毎日です。
オーケストラ曲も大好き
音楽がずっと生活の一部として存在してきましたが、小学校高学年になったころから、向き合い方が変わってきたと言います。「ただただピアノが好きで弾きたいとか、がんばってコンクールに出て勝ちたいということだけでは、モチベーションが保てなくなってしまった時期があったのですが、最近は、どう練習していったらいいか、どう音楽とつきあっていこうか、すこしずつ先のことについても考えられるようになってきました。とはいえ、やりたいことがたくさんあって、何がいちばんやりたいのか、まだ決められないし未来はわからないから不安もあるんですけど……」。小学生までとは違い、このあとの進路を考えることが現実的になってきた中学生だからこその悩み。「でも、一生懸命がんばっていれば、どうにかなるかなという気持ちもあります(笑)」。壁谷先生からの「人間は、不安だからがんばれるんだよ」という励ましの言葉も、胸に刻んでいます。
俊成さんは、音楽以外にも機械やコンピューターを触ったり、物をつくったりすることが好きです。小さいころはレゴを組み立てたり、遠くまで飛ばせるように自分で考えながら紙飛行機をつくったり、小学校高学年のころからは、学校の技術の教師であるお父さんに教えてもらいながら、プログラミングで簡単なゲームをつくったり。「お兄ちゃんが安い3Dプリンターを買ってくれて(笑)、自由研究に使ったりもしました」。勉強も好きなので、受験勉強をがんばって中高一貫校に入学し、ピアノやヴァイオリンの練習にもしっかり向き合える環境を整えています。
俊成さんが喜びを感じるのは、「美しいメロディに触れたとき」。オーケストラに入り他の楽器と混ざることでピアノだけではない音楽に出会えたり、ピアノに生かしたいと始めた作曲の勉強もいまでは美しい音楽を生み出したいという気持ちになったりして、音楽そのものへの想いが強くなっていると言います。「より多くの曲に取り組んでレパートリーを増やして、コンクールも受けていくなかでいい結果もついてきたら嬉しいです。そしていつか、大きな国際コンクールに参加して、いろいろなオーケストラや指揮者のかたと共演してみたい。これからもたくさんの美しいメロディやもっといい音楽に出会いたい。そのために、ピアノをがんばれるのだと思います」
いい音楽に出会うために
そんな俊成さんを見つめるお母さんは「自分が弾けなかったような難しい曲を弾いてくれているだけで充分嬉しい。でも、わたしはこの子の演奏が大好きで、トシくんに弾いてほしい曲がまだたくさんあるので、これからも聴くことができたらもっと幸せです」。厳しさを知っているからこそ、できる限り応援したいとお母さんは考えます。心強いサポートのもと、俊成さんの未来へ続く道は明るく照らされています。
そばに寄り添うお母様からは子を想う気持ちがたっぷり感じられて、ご家族のとてもいい雰囲気が伝わってきました。何かをがんばるときには環境も大切です。ご家族に見守られあたたかな環境で、俊成さんは存分にピアノもオーケストラも勉強もがんばれるのですね。そして、今後どんないい音楽に出会えるでしょうか……楽しみですね。
※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは1月下旬に行いました。
全国大会での柳幸俊成さんの演奏はこちら。
