全日本ピアノコンクール

高宮奈月さん

小学生中学年部門の最優秀賞は、高宮奈月さん。横浜市立矢部小学校4年生です。コンクールは、普段の練習とは違って素敵なホールで演奏できることが楽しい、という奈月さん。お母様と一緒にインタビューにこたえてくれました。

高宮奈月さん

全国大会での演奏順がグループの最初で、前の演奏者の様子を見ることもできず、ステージ上の奈月さんには「やや緊張も感じられた」とお母さん。それでも、審査員6人中4人が98点をつける高評価で、堂々の最優秀賞を受賞しました。

ピアノをはじめたのは3、4歳のころ。幼稚園に通うころからは、自宅の近くで開催されるコンクールや、お友だちが出場するコンクールなどを参考に、奈月さんもコンクールに出場してきました。はじめのころは「いろいろなお教室が集まる発表会」だと思っていた奈月さん。そうしてコンスタントにコンクールへの出場を重ね、一年を通していろいろなホールで弾くことを楽しんできました。そのため今回も、会場審査を選択してエントリーしました。ホールで演奏するほうが、奈月さんは慣れているからです。

ピアノをはじめたころ

昨年は、全日本ピアノコンクール以外にも「いくつかいい結果をいただけた」とお母さん。全国大会での演奏はすこし速くなってしまったところもあったけれど、最優秀賞という結果は素直に「嬉しかった」と奈月さんは振り返ります。「コンクールでは、同じ課題曲をいろんな人が弾くのを聴けることも勉強になります。普段習っている先生とは違うアドバイスをもらうこともあって、また頑張ろう、という気持ちになります」。

現在は、週に二日、都内までレッスンに通っています。平日は学校が終わってからお母さんと、週末はお父さんと一緒です。お父さんは、奈月さんがピアノを習いはじめてからクラシック音楽に関心をもつようになりました。そんなお父さんが「練習する曲だけ聴きがちになってしまうから」と、月曜日はバッハ、火曜日はモーツァルト……といった具合に、いろいろな作曲家の作品を聴くことを提案してくれて、毎朝CDを聴くのが家族の日課になっています。そんなふうにいつも応援してくれているお父さんお母さんと一緒にコンサートに行くのも、奈月さんの好きなことのひとつです。

自宅では、練習室にひとりでこもってピアノに向き合うという奈月さん。まだ小学生ですが、お母さんやお父さんが横について見る、ということはほとんどしません。もっと小さかったころは、時間を気にすることなくぶっ通しで練習を続ける奈月さんに、心配したお母さんが「休憩しようね」と声をかけていましたが、小学校3年生の後半からは、1〜2時間ほど練習したら10分間休憩するように、自分で時計のタイマーをかけて取り組めるようになりました。疲れているときは時間が長く感じることもありますが、いまは手が疲れないように工夫しながら練習できています。
休憩中は本を読んだり、猫と遊んだりして気分転換します。最近読んだ本は、『赤毛のアン』や『若草物語』。猫のルナちゃんは、ひとりっこの奈月さんにとって姉妹のような大切な存在です。

スタジオでの練習

奈月さんが感じるピアノの魅力は、「どんな演奏もできて、いろんな音色が出せるところ」。特に「やさしくて明るい音色」が、奈月さんの好きな音です。新しい曲を弾けるようになるのが楽しくて、これまで苦しかったことや辛かったことはありませんでした。やめたいと思ったことも一度もありません。お母さんは「小学生高学年、中学生と進んでいくと曲も難しくなっていくから、これから大変なこともあるかもしれない」と言いますが、「これからも、“楽しい”という気持ちで続けてくれたら」と見守っています。

奈月さんに好きなピアニストをたずねると、「アンドラーシュ・シフさん、マルタ・アルゲリッチさん、ダニール・トリフォノフさん、藤田真央さん……」とすらすら名前が挙がります。こうしたピアニストたちのCDやコンサートでの生の演奏を聴いては、音のバランスやトリルの入れかたなどを研究しています。
これまではドイツやロシアの作曲家の作品に取り組むことが多かったので、今後挑戦したいのは、ラヴェルやドビュッシー、プーランクなどフランスの作曲家の作品です。

将来の夢は、ピアニストになること。「わたしは、好きなピアニストのコンサートには何度も行きたくなります。将来、わたしも『また聴きたい』と思ってもらえるような素敵な音が出せるようになりたいです」と奈月さん。いつか海外での国際コンクールにもチャレンジしたいと考えています。奈月さんの夢は、海の向こうに広がっています。

ルナちゃんはいつもそばに


オンラインインタビューの途中、愛猫のルナちゃんも画面に入るように抱き上げてくれた奈月さん。仲のよさが伝わってきました。

ときどきお母様のフォローが入りつつも、こちらの質問にしっかりと自分の言葉でこたえてくれました。“楽しい”という気持ちを大切に、やさしくて明るい奈月さんの音色をこれからも聴かせてくださいね。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは1月下旬に行いました。

全国大会での高宮奈月さんの演奏はこちら