全日本ピアノコンクール

C級関口想与さん

C級最優秀賞は、芦屋市立山手小学校6年の関口想与さんです。昨年度の中学生部門で優勝した白石萌々音さんが同じ教室の先輩で、萌々音さんの素敵な演奏に触発されて出場。全国大会は、審査員全員が9点以上をつける高評価でした。これまでも数々のコンクールで優秀な成績をおさめてきた想与さんと、そばで支えるお母様に、お話を聞きました。

関口想与さん

4歳から本家規代先生に付いてレッスンを受けている想与さん。「7年間、先生の怒った顔は一度も見たことがない」と、お母さんと口を揃えます。難しいことはいっさい言わないのに、気づいたらできるようになっている。先生の無理のない指導法は、とても魅力的です。生徒同士、お母さん同士も仲がよく、いい雰囲気の中でレッスンを続けています。

本家規代先生とお教室のお友だちと

お母さんの父であるおじいちゃんが声楽家、お母さんの姉である伯母さんはオルガニストと、身近に音楽がある環境でしたが、2歳の時に「バイオリンをやりたい」と強烈に主張し、まわりを驚かせました。そのときは、年齢的にまだ早いことからリトミックとピアノを習うことにしましたが、お父さんの仕事の都合で兵庫県に転居したため、すべて白紙に。そして、引っ越し先で、いいピアノの先生がいるからと紹介してもらったのが、本家先生でした。
もともと言葉が遅くあまり話をしなかったことから、「自分の気持ちを表現できることを」とピアノとバレエを始めましたが、「バレエに比べて、ピアノはのびのびと楽しそうに弾いていた」とお母さんは言います。

これまで、日本クラシック音楽コンクールや全日本ジュニアクラシック音楽コンクールで1位になるなど、華々しい成績をおさめてきましたが、本番でうまくいったと思っても結果がともなわないことや、逆に失敗したり課題が多かったりする演奏で1位をとることもありました。今回の全国大会は、「緊張したけど、すごく楽しかった」と手応えを感じる演奏でした。

以前は緊張するタイプでしたが、カウンセリングを受けたところ、想与さんに合った本番前の対処法を教えてもらい、いまは落ち着いて舞台に立つことができています。好きな香りを嗅いだり、先生からの励ましメッセージを繰り返し読んだり、バナナを食べたり……。そして何より、「ピアノが味方になってくれる」と想与さん。弾いているうちにだんだん気持ちが和らいでいく。ピアノは、想与さんにとって安心できる存在だと言います。

ピアノの魅力をたずねると、「例えば、先生から、ここはチェロ頑張ってるよー! と言われると、なるほど! と思えて、左手でチェロ感を出す。オーケストラのような音を出す、という指示があったら、大勢の人が音を出しているように華やかに演奏する。そうやって、工夫すれば自由自在に好きな音を出せるのが、一番おもしろいところ」だと感じています。

ピアノを弾くと気持ちが和らぐ

普段は、基礎練習に1時間半、曲の練習に2時間半程度をあてています。休日はトータルで7〜8時間。通して弾くのが大好きですが、お母さんからは「もっと部分練習をしないと」と言われます。とはいえ、「一つのことをコツコツちゃんとやることにかけては、すごいです。真似できない」とお母さん。想与さんの長所をしっかりと見極めて、見守っています。
表情や言葉で表現するよりも、弾いたり描いたりすることの方が得意という想与さん。最近は、タブレットを使って映像編集したり、絵を描いたり。こちらもグングン腕を上げています。

小学校3年生のときに、通っている学校に指揮者の佐渡裕さんが演奏をしに来てくれたことがありました。「指揮者体験の時間があって、ただ手をあげるだけじゃあててもらえないから、クリスマスにサンタさんからもらった指揮棒を持って行って手を挙げたら、あててもらえたんです(笑)」。そのときに、良い耳を作るにはどうしたらいいかとたずねると、佐渡さんは「美味しいものを食べたり、美しい風景を見たり、絵を見たり描いたり、物語を読んだりすることが心を育てて、良い耳を作るんだよ」と教えてくれました。
その後、ピアニストの反田恭平さんのレッスンを受ける機会があり、そのときには、小澤征爾さんから聞いたこととして「実は、学校の勉強って全部ピアノにつながっているんだよ。だから学校の勉強はすごく大事にしないといけないよ」と話してくれました。
それ以来、ピアノ以外の時間も大切にすることや一生懸命やることを、心に刻んでいます。それが、音楽のためになるからです。

すでに高校までは、はっきりとしたビジョンを描いています。「いつかショパン国際ピアノコンクールに出たい」という夢もあります。いまのところは、「関口想与のピアノをもっと聴きたい、と思ってもらえるようなピアニスト」を目指していますが、これから先、どんな音楽や人との出会いがあるかわからないから、「そのときに決めたい」とも思っています。お母さんは、「音楽を通じて、生きる力を養ってもらえれば」。大きく広がる想与さんの未来を、これからも家族みんなで支えていきます。

自分の音楽を極めていきたい

「趣味は家族」というお父様も、いろいろなところでサポートをしてくれているそうです。お話の内容からも、ご家族で強い信頼関係を築いていることが伝わってきましたが、インタビュー中のやりとりを見ても、想与さんとお母様はとても仲良しで、笑顔と笑いの絶えない楽しい時間となりました。
「聴いた人の心が元気になるような演奏をしたい」とも話してくれた想与さん。きっとご家庭やお教室のあたたかい雰囲気、そして何より明るい人柄が演奏にあらわれるのだと思います。これからのご活躍も楽しみです。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは2月下旬に行いました。

全国大会での関口想与さんの演奏はこちら