全日本ピアノコンクール

木田茉莉奈さん

未就学部門では、みどり幼稚園(学校法人 高井学園)年中の木田茉莉奈さんが、最優秀賞に輝きました。普段はレッスンに充てているという夕食後の時間帯、茉莉奈さんにとってはピアノの先生でもあるお母様と一緒にオンラインインタビューにこたえてくれました。画面に映る茉莉奈さんのうしろには、コンクールでうけとったトロフィーや盾がずらりと並んでいました。

木田茉莉奈さん

地区大会から全国大会まで通じて、多くの審査員から「リズミカルで生き生きとした演奏」と評価された茉莉奈さん。全国大会のステージでは、演奏前後に堂々と落ち着いてお辞儀をする姿が印象的でした。茉莉奈さん自身も、緊張することなくいつもどおり演奏できて「楽しかった」と振り返ります。

茉莉奈さんがピアノをはじめたのは4歳半のころ。それから半年経った昨年春から、コンクールに挑戦しはじめました。以来、月に2、3回はステージに立ち、全日本ピアノコンクール以外にも、第24回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA でアジア大会金賞、ブルグミュラーコンクール東京ファイナルで金賞、ベートーヴェン国際ピアノコンクールアジアで金賞、日本バッハコンクールで金賞……と、習いはじめてわずか1年4か月の間に、着実に結果を残してきました。「子どもなりの、トロフィーが欲しいという気持ちはあると思うけれど、ホールで弾くのが好きみたい」とお母さん。特に、会場でのピアノの響きが好きで、全国大会の日の朝も「今日のホールは、どんな響きか楽しみ」と言っていたほど。自宅でもグランドピアノで練習しますが、ホールで演奏したときの響きが違うことを茉莉奈さんは感じとっているようだと、お母さんは言います。

茉莉奈さんのお母さんは、ピアノ講師です。「意図的にCDを聴いたりすることはなかったけれど、お腹のなかにいるときから、わたしが弾くピアノの音が毎日聴こえてたのかな」とお母さん。生まれてからは、音楽にあわせて体を動かしたり、生活のなかにリトミックの要素をとりいれるようにしていました。3歳になるころにはピアノをはじめさせたいと考えていましたが、下の子の出産と重なりタイミングを逃していたところ、あるとき茉莉奈さんから「ピアノをやりたい」と伝えてきたと言います。お母さんがピアノを弾く姿が「ステキだったから」です。
それ以来、毎日欠かさずお母さんのレッスンを受けています。一度休むと腰が重くなってしまうため、幼稚園から帰宅すると、手を洗ってすぐに1レッスン。おやつは、そのあとです。さらにまたレッスンしたり、お母さんが夕食の支度をしている間にひとりで練習したり。メトロノームにあわせてゆっくり弾いたり、右手だけ左手だけの部分練習をしたりしています。そうした練習のときでも、曲の最後の一音の余韻、その響きが好きだと、茉莉奈さんは言います。

最後の一音まで、響きを楽しむ

年末に行われた幼稚園のクリスマス祝会では、クリスマス曲の「ひいらぎかざろう」をみんなで演奏して、茉莉奈さんは大太鼓を叩きました。担当は、オーディションで選ばれました。お母さんはあとからそのことを知りましたが、茉莉奈さんになぜ大太鼓がやりたかったのか尋ねると、「いちばん大きいから」。実際に叩いてみると「すごい響いてて、すごく楽しかった」。やっぱり、“音の響き”が茉莉奈さんのいちばん好きなところなのです。

全国大会当日は、お父さんと妹も会場で応援してくれました。コンクールの全国大会や本選は茉莉奈さんの自宅から遠方のことが多いので、いつもお父さんが車で送迎してくれます。この日は平日だったため、有休をとってくれました。最優秀賞という結果も、喜んでくれたと言います。
札幌に住んでいるおばあちゃんは、全国大会での演奏をライブ配信で観てくれて「ステキに弾いてたね」と褒めてくれました。おばあちゃんもピアノ講師。なかなか会うことはできないけれど、いつも「がんばってるね」と見守ってくれています。

茉莉奈さんの自宅では、庭でたくさんのバラを育てています。「ピアノをただ技術的に練習するだけではなくて、表現力も育めるように。ピアノだけに偏らないように、自然に触れたり、美しいものに触れたり、情操教育の一環として楽しみながら家族みんなでお手入れしています。遊ぶときもピアノも、全力で」。これが、お父さんお母さんの方針です。茉莉奈さんも毎日お手伝いしていて、これから春になると30種類以上のバラが咲きます。特に、ピンクのバラが茉莉奈さんのお気に入りです。

お気に入りのバラに囲まれて

「大人になったら、ピアニストになりたい」と茉莉奈さん。「とりあえずいまできることはすべてサポートして、あとは本人にとって楽しい人生になれば」とお母さん。「下の子がもうすこし大きくなったら、姉妹で連弾させたい」。これも、お母さんのこれからの楽しみのひとつです。

 

「音の響きが好き」。お話のなかで、何度も、そしてはっきりと、茉莉奈さんが口にしたことです。わずか5歳で、自分にとって心地よいものが何かを理解し人に言葉で伝えられるのは、とても立派です。その心地よさの追求が、夢実現の道筋となるのかもしれません。
お母様と、そして近い将来は妹さんとも一緒に、素敵な音をたくさん響かせ続けてくださいね。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは1月下旬に行いました。

全国大会での木田茉莉奈さんの演奏はこちら