全日本ピアノコンクール

小田和佳さん

⼩学⽣⾼学年部⾨の最優秀賞は、愛媛⼤学教育学部附属⼩学校6年の⼩⽥和佳さんです。昨冬弾いていたショパン作曲「ノクターン 嬰ハ短調 遺作」が全⽇本ピアノコンクールの課題曲にあったため、師事する井上祐⼦先⽣に勧められてエントリーしました。お⺟様も付き添ってくださり、オンラインインタビューにこたえてくれました。

⼩⽥和佳さん

結果はあまり気にしていなかったという和佳さん。お友だちから連絡を受けたお⺟さんが、リビングでくつろぐ和佳さんに結果を⾒せて知ったと⾔います。全国⼤会の会場となった神奈川県⽴⾳楽堂は、思っていたより広いホールでしたが、ピアノがすごく弾きやすかったため、さほど緊張することなく普段どおりに臨めました。でも、「まあまあよく弾けたけれど、ミスタッチがあったので⼼配していました」。だからこそ「どんな結果になるのか、正直わかりませんでした。⾃分で結果を⾒たときは、ほんとうに信じられなくてびっくりしました。とっても嬉しい気持ちでいっぱいです」と話します。コンクールには⼩学校2年⽣からチャレンジして、ピティナでは毎年のようにベスト賞や銀賞を受賞し結果を残してきたものの、コンクールで第⼀位となるのは今回が初めて。審査員からは、美しい演奏と豊かな⾳楽性が、⾼く評価されました。

和佳さんがピアノを始めたのは、4歳のとき。⾳楽が好きでピアノが趣味だったお⺟さんが、和佳さんとは8歳違いのお兄さんにもピアノを習わせていたため、和佳さんにとってピアノは⼩さなころから⾝近な存在でした。「⾃分の気持ちがそのままいろんな⾳になって表れるところが好き。ちょっと嫌なことがあったときにピアノを弾くと、その気持ちが⾳に表れてしまうような気がします。反対に気分が乗っているときは、ピアノと仲良く練習ができているように思います。ピアノは、⾃分の本⼼が出てしまう楽器かなと感じることがあります」。

5年⽣のとき、指を痛めて3か⽉ほどピアノが弾けなかったことがありました。「ピアノが弾けないのは⾟かったし、すごくヒマなんだなと思いました(笑)」と和佳さん。ピアノが⾃分の⽣活に占める割合の⼤きさを改めて感じたとともに、「その経験から学んだこともあって、だからこそ感じられる⾳⾊がある」と⾔います。再び練習ができるようになってからは、先⽣⽅からもアドバイスをいただき、それまでの指に負担のかかるような弾きかたを⾒直しました。と同時に「もっとピアノとしっかり向き合いたい」と気持ちが前向きになり、より作品に合った⾳で弾けるようになりたいと、思いを強くしました。

ピアノと向き合う

和佳さんは、美しくきれいで、ゆったりとした曲が好きです。ドビュッシーの作品などは、いつかチャレンジしたいと思っています。楽譜を⾒ただけではそこまでの難度は感じなくても、弾いてみると全然印象が違うことがある。それは⾳の表現だけではない、情景や感情といったことも含めた作品の世界観を表現する、ということの難しさだと感じています。「まだ12年しか⽣きていないから、経験という部分でも、作曲家のもつイメージを理解するのは難しい。先⽣⽅がいろんな話をしてくださるなかで、つかんでもらうようにしています」とお⺟さん。

井上先⽣のレッスンは、週に⼀回。松本和将先⽣のレッスンには、愛媛県内だけでなく、先⽣がいるところに行けるときに通います。今回の結果には、先⽣方も喜んでくれましたが、「賞をとったここからが、⼤事」と声をかけてくれました。この3⽉には、松本先⽣も講師を務める『愛知カンマームジークアカデミー』に参加。バイオリンとチェロとピアノ三重奏曲にチャレンジします。ドキドキしますが、楽しみです。昨年夏に1⽇だけのミニカンマ―(勉強会)に参加して、初めてバイオリンと合わせて演奏し、バイオリンと合わせるための弾きかた、バイオリンがいるからこそ出せるピアノの⾳があることを知ることができたと⾔います。「ひとりでピアノを弾くのとは違う感覚を味わうことができて、とても楽しかった」と和佳さん。こうして⼀歩⼀歩、経験を積み上げています。

井上祐⼦先⽣と

松本和将先⽣と

和佳さんは、J-POP も好きです。「その曲の歌詞を頭に思い浮かべるだけで、ピアノが⼀緒に歌ってくれる」と楽しんでいます。
絵を描いたりデザインを考えたりすることも好きで、お絵描き教室にも通っています。2歳のころから⾃由に描いてきたと⾔い、「もしかしたら、ピアノより好きかも(笑)」と和佳さん。ピアノを弾くことが想像⼒を養うことにもつながっているようで、「ピアノをやっていなかったら、こんなに絵を描けなかったかもしれない」と思わぬ効果も感じています。

学校ではコーラス部に所属し、活動を頑張ってきました。学校までは電⾞で⽚道1時間ほど。毎⽇朝練があるため、7時前には⾃宅を出ます。11⽉に⾏われた『全⽇本合唱コンクール ⼩学校の部』では、学校としては久しぶりの全国⼤会出場で、みんなで盛り上がりました。2⽉末にコンサートを終えると、コーラス部も卒業。中学校に進学したら、コーラス部に⼊るか美術系の部活に⼊るか、悩んでいるところです。

皆で叶えた全国⼤会出場

小学生最後のコンサートを終えて、仲良しの友人たちと

「いまはやってみたいことがたくさんあります。でも、ピアノでいろんな曲を弾いてみたいという気持ちは⼩さいときから変わりません」と和佳さん。好奇⼼と可能性いっぱいの12歳です。

 

全国大会では、小学生であることを忘れてしまいそうなほど、とても大人っぽい演奏が印象的だった和佳さん。インタビュー中も、質問の内容をしっかり理解しようとしながら、自分の考えや思いを一つひとつ丁寧に言葉にして伝えてくれました。ものごとにきちんと向き合おうとする人は、素敵です。ピアノ、絵、合唱……どこかでまた、和佳さんの‟素敵”に出会えるのが楽しみです。

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは1月下旬に行いました。

全国大会での小田和佳さんの演奏はこちら