全日本ピアノコンクール

三木郁子さん・森川真理子さん

昨年度から設けられた連弾部門は、年齢別に3つの部門があります。今年度、O31の部で最優秀賞に輝いたのは、三木郁子(みきいくこ)さんと森川真理子(もりかわまりこ)さん。もともとは先輩と後輩の間柄だったというおふたりの連弾歴は、なんと33年。ペアを組んで、長く活動を続けられた秘訣とは……。

三木郁子さん・森川真理子さん

「私たちが最優秀賞をいただいてよろしいのでしょうか?? というのが、正直な感想です(笑)」。全国大会は、プログラム順で最後の演奏だった三木さん、森川さんのペア。「締めくくりは楽し! 私たちらしく! という思いで演奏させていただきました。響きのい立派なホールに立つことができ、貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました」と振り返ります。審査員からは「大変いきいきとした演奏で素敵」「躍動感あふれる演奏」「息がピッタリとあっていて生命力にあふれた演奏」と、まさにふたりの思いと演奏への姿勢が伝わる講評が並びました。

ピアノ講師として指導にあたっているふたり。「実はほかのコンクールにエントリーしようとしていたところ、定員オーバーで申し込みできなかったのです。でも、せっかく練習しているし、ほかにチャレンジできるところはないかと探して、全日本ピアノコンクールに出会いました。私たちの年齢、日程がピッタリでした」と三木さん。森川さんは「還暦を迎え、何かに挑戦したいと思ったんです。それから、日ごろ教えている生徒たちが緊張しながらも本番に向かう姿を見て『先生もがんばらないと!』と思ったことと、相方の三木にうながされまして。笑」

出会いは、30年以上前にさかのぼります。もともとは、ヤマハ音楽教室システム講師の先輩と後輩という間柄でした。講師コンサートでミュージカルの夫婦役を演じたことがきっかけで仲良くなり、その後、神戸三宮駅のピアノラリーに出演したのが、ふたりでの初めての演奏です。それから33年、「ずっとコンスタントに活動を続けてきたわけではないのですが、生徒の発表会で台のピアノで演奏したり、自分たちの結婚式でふたりで連弾したり、遊びで即興で弾いたりして、楽しんできました」。プライベートでもふたりで旅行に行くほどの仲良し。無理なく、楽しく向きあってきたことが、今につながっています。

はじめてペアを組んで連弾をした日

ふたりで連弾していて、今まで苦しかったり辛かったりしたことは、まったくないです」と三木さん。とはいえ、ふたりとも現役の講師。また、住まいが神戸と京都と離れていることから「中間地点の大阪で、練習部屋を借りて合わせることが多いです。ただ、家事と仕事、特に仕事が忙しいと練習時間の捻出が難しく、本番前はなんとかふたりの予定を合わせながら、隙間時間を利用しながら、乗りきりました

今回ふたりが演奏したのは、ウクライナ出身でロシアの作曲家、カプースチンの人気作品であり唯一の連弾曲『シンフォニエッタOp49 第一楽章』です。「この曲は、拍感を意識しながらバランスを整えることを重点において練習してきました。よく録音もしましたね。それをあとから聴いてみると、曲に入り込みすぎて冷静に音が聴けていないことがわかったりして、問題点がよく見えました」と話します。指導者であるふたりでも、まだまだ学びがありました。

ピアノも旅行も楽しむ

長年、ピアノとともに歩んできたふたりですが、三木さんは「ピアノを通じて自分を伝えることができるところが好き。そして、連弾の魅力は、ひとつの音楽をふたりでつくりあげて表現することの喜びです」。森川さんも「主役にもなれるし、サポート役にもなれる。アンサンブルもできるし、さまざまなジャンルの演奏ができる。いろんなことができるのが、ピアノの魅力と語ります。

今後については、「ピアノを弾くことに、年齢は関係ありません。私たちのように、いくつになってもピアノが大好きで、ピアノを通していろんなことにチャレンジする方が増えればいいなと思っています」と三木さん。そして森川さんも、「このさきも健康に気をつけて、おばあちゃんになってもピアノを弾いていたい。連弾ギネスってあるのかな?? あるとしたら、ギネス更新が目標!」と大きな夢を抱いています。

いくつになってもピアノを弾いていたい

※文中の学年・年齢は、エントリー時のものです。
※インタビューは1月中旬に行いました。

全国大会での三木郁子さん・森川真理子さんの演奏はこちら