1級

ショパン:舟歌 Op.60

解説

舟歌(Barcarolle)とは、元はヴェネツィアのゴンドラを漕ぐ船頭の歌を指し、多くの作曲家が舟歌の名を冠した作品を残しています。ショパンが作曲した舟歌はこれ一曲であり、また、一般的な舟歌が8分の6拍子であるのに対し、この作品は8分の12拍子で書かれています。これにより、フレーズが非常に⻑く、流暢なものになっていますが、この楽曲はその他にも、イタリア風の優雅な旋律や豊かな和声、展開や構成の緻密さなどで、ショパンの作品の中でも指折りの完成度を誇っていると言われます。また、この頃、ショパンは恋人のジョルジュ・サンドと破局の寸前にあったと考えられており、この作品にはその寂しさが滲み出ているようにも感じられます。

執筆者:山本大地

参考演奏

冒頭譜例