1級

ラヴェル:“鏡”より「道化師の朝の歌」

解説

この小曲集「鏡」の作曲にあたりラヴェルは、「『水の戯れ』から自分を解放するような曲を書く」と言い、人々を驚かせたと言います。しかし、その試みが成功しているのは、むしろその前作であった「ソナチネ」であるとも言われています。確かに「鏡」には実験的な要素が見られるのですが、これらが後年のラヴェルの様式に生かされているとは必ずしも言えないようです。その中で、この「道化師の朝の歌」で試みられた、旋法の使用や、⻑短和音をぶつける手法などは、後年のラヴェル作品にも見られるものでした。現在でも演奏機会に多く恵まれ、作曲者本人による管弦楽編曲がなされていることからも、この作品の完成度の高さが伺えます。

執筆者:山本大地

参考演奏