1級

モーツァルト:ピアノソナタ イ短調 K.310 より第 1 楽章

解説

1778年の7月、訪れたパリの地でモーツァルトは母親を失いました。当時、彼は雇い主であるコロレド大司教と折り合いが悪く、新たな就職先を求めて母親のアンナとともに旅に出ていました。しかし、かつて神童モーツァルトを迎えてくれたパリは、⻘年となったモーツァルトには冷淡でした。言葉も通じない異国での生活による心労もあってか、アンナは病に倒れ、帰らぬ人となってしまったのです。この作品は、モーツァルトがパリで最初に書き上げたピアノ・ソナタでした。彼の張り詰めた心情や、母親の死を暗示するかのような緊張感をはらんでおり、構成的にも内容的にも非常に充実した楽曲であると言われています。

執筆者:山本大地

参考演奏

冒頭譜例